第六話 師匠の家
1ヶ月ぶりです!風邪にかかったり頭が痛くなったりゲームのベータテストとかやってたりしてたらいつの間にか1ヶ月経ってました・・・。本当にすみません!プロットは書き進めてたんですが肝心の本文がこのザマでは・・・。
更新速度はあげていこうと思います!これからも宜しくお願いします!
この大陸―スぺイダ大陸には、三大国という国力の特に高い三国が存在する。
まず、三大国家の一つにして、俺の現在住む、サイトニス王国。遥か古代に西の果てで魔王を討ったと言われる勇者、ユーキによって興された王国である。その国力は非常に大きく、隣国のライドック帝国、近隣国のアリア神聖国と並び三大国家と評されている。広大な森と鉱山を保有するため、たびたび帝国とは国境線を争うこともあるが、概ね平和な国である。しかし、その国軍は勇者を初代王に頂くため鍛錬には特に力が入れられ、勇者の考えのもとに実行された『ジム』なる身体鍛錬施設により効率的に兵隊を育て上げている。軍力としても随一の力を持っていた。国としては、王制・貴族制を敷いておりそのため腐敗の悪臭もするが、政治は概ね回っている。ただ、その一方で一部の貴族が領民を残酷に扱うこともあるのが、常に王を苛む問題ともいえる。
次に、三大国家の一つにして、王国のライバル、ライドック帝国。最近、小国家がまとまって出来上がった新興国家ではあるが、その国力はサイトニス王国と対等のそれである。帝国、と名の付く通り『皇帝』が国のトップとして君臨して独裁政治をとっている。貴族もいるにはいるが、こちらの場合は領主、や、『皇帝』の身を固めご機嫌を取るもの、程度の価値しかない。いくつもの小国家の集合体、という成立過程から飛び飛びに国土が存在しているが、森林は数を減らし砂漠が多くある国である。そのため、水の物価が高く旅人はまずこの国の水の値段に驚くであろう。この国では、エルフ、獣人、などと言った亜人を下に――人間という種に不純物が混ざったものとして――見ており人間至上主義であることが特徴であろうか。
最後に、三大国家の一つにして、この大陸一番の宗教の総本山、アリア神聖国。この国は神子と呼ばれる現王族の先祖、アリアを崇める宗教国家である。そのアリアが唯一神として崇められているアリア教の神殿は世界各国に存在している。そのため、信者=国民のようなものであるため、単純な数でいえばこの国が一番であろう。この国には貴族は存在せず、身分の差など存在しえない・・・が、なぜか教会内の地位がそのまま身分となっているおかしな国ではある。とはいえ、そのあまりの信者数に各国はこの国に強く出られることはなく、また、この国もほかの国とは協調外交を心掛けている節があるため表面上、国際問題はあまりない。ほかの国々とは違い、珍しくも女尊男卑の社会を形成している。
これら三つが主にこの世界の情勢にかかわってくる。つまるところ、この三国で何かがあれば大変な影響が世界中に巻き起こるというわけだ。
そして、つい一年ほど前に、俺の住むサイトニス王国の王女、ローズ第三王女が俺の家に逃げてきた、その理由は現国王が崩御なされる寸前に、王位を継ぐことが約束されていた第一王子が崩御。そして、第二第三王子、ついで、生後数か月の第四王子による王位継承権の争いが始まり、各々に自分たちの味方をするよう迫られたせいであった。
つまり、今この国はかなり情勢が危ういと言っていいだろう。だが、この時の俺は、そんな単純な考えすら思い浮かぶことはなかった・・・。なぜなら、俺はこの時期、非常に楽しく過ごしていたためである。
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「は~、でっかい家ですねえ」
「ふふん!自慢ではないがね、この家は私が自分で建てたものだ!!!」
「へ~、師匠、土木もできたんですか」
「いや、大工さんにボクの貯金を払って作ってもらったって話だよ?」
「それは、自分で、でなく自分の稼いだお金で、ですね」
そんな無駄口をたたきながらも俺は師匠の家を見上げてびっくりしていた。そう、でかいのだ。というか、これはもう家ではない。屋敷だ。以前、ガランドの家を屋敷とか呼んだがあんなのとは比べ物にならない。本物の屋敷であった。まず、なんて言っても門から屋敷までがすごく長い。100mはあるだろうか?道がある。しかも、その100mもただの直線ってわけでなく、木を動物の形に刈り込んだり、動物が駆け巡ったりしていて退屈な景観、というわけでもない。素晴らしすぎるなあ、おい。
そして、屋敷。荘厳なドアがあり、二階に窓がたくさんあり、洋館ってやつだ。しかも、二階の窓を見たとき、ちょうど窓を掃除していたメイドさんと目があった。すぐ隠れてしまったがうら若き乙女のメイド。いや、乙女イド!!これは、もう、あれか。天国か・・・・。
「・・・お~い、聞こえてるかいケインく~ん?」
「ん、あ、はいなんですか、聞こえてませんでしたよ師匠」
と、妄想を膨らましていたところ、師匠からの声を聞いて俺は意識を現実に帰還させた。
「いや、聞こえてなかったならもう少し申し訳なさそうな顔をしなよ」
「ガランドの息子なもので」
「なら、仕方ないかな」
なら仕方ないのか。言い訳に使った俺もあれだが、いったいガランドはどんなことをしでかしたんだ?
「んん!聞こえてなかったようだからもう一度説明するよ。この家には君以外にもメイドや執事も住んでいる。それはいいね?そして、そのほかにあと一人、ボクの妹も住んでいるんだ」
そこまで言った後、師匠は顔をググッと近づけて言う。
「決して、ボクの妹に手を出さないでくれよ?」
・・・威圧感が物凄かったです。ええ。
「さて、忠告はしたからね?もし守らなかったら・・・」
「もし守らなかったら・・・?」
「もぐ」
「何を!?」
たまひゅんってやつです、はい。俺の息子が縮み上がっていくのが感覚でわかりました。
「さて、じゃあ、入るね」
わざわざ俺を脅した後、師匠はにっこりといい笑顔で笑って屋敷の扉を開く。すると、
「「「お帰りなさいませ、ご主人様!!」」」
「うおっ!?」
総勢、十五人ほどのメイドと執事の連合軍に圧倒された。しかも、彼らの顔だちを見ると・・・
「い、イケメンと・・・美女ばかり・・・だと!?」
そう、絶世の・・・という言葉を付けられるかは別としてもそれなりにレベルの高い顔だちの人々が並んでいる。なんだここは、モデルたちの夏休みとかで訪れた別荘的なところだろうか・・・いやいや、まて、この人たちは召使だ。つまり・・・ここの主の弟子である俺は・・・つまみ食いが・・・。
「一応言っておくけど、彼女らに手を出すことは禁止するからね」
「ふぁげっ?!」
お、驚きすぎて変な声が出たが・・・何故ばれた!?
「いや、なぜばれたって顔してるけどガランドみたいないやらしい顔してたからね・・・わかったよ」
くっ・・・、顔で・・・だと?!というかガランドみたいな!?本当に何をやらかしたんだ!?ってか、それよりポーカーフェースの練習でもせねば・・・。そんな決心を俺はした。
「おかえりなさいっ、お姉さま!!」
そんな決意をしているとなりで、師匠に何かが突っ込んだ。敵襲か!?と、思ったら突っ込んだのは小さい女の子・・・三歳くらいだから幼女だった。髪は師匠と同じく赤色、瞳も師匠と同じく銀。というか、顔も似てる気がする。・・・そういえば、さっき「お姉様」って言ってたし、師匠も「妹」がって・・・。
「んもー!!!かわいい!!!!!!ボクの妹~~~!!!!!!」
ぎゅーっと思いっきり師匠はその幼女を抱きしめる。その顔はだらしなかった。
「あ、あの師匠・・・?それは・・・・?」
「ああ!!この娘はボクの妹!!名前は、クー!!!!」
そういってぎゅーと抱きしめるが・・・・あれ?なんか痙攣してね?
「あ、あの・・・師匠・・・?その娘・・・・」
「え?あ・・・ぎゃー!!!クー!!!!」
クーちゃんは初登場数分で危機に瀕していた。
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「わたし・・・クリス・スーラン!!!よろしく・・・!」
かわいい。それが俺の第一印象だった。
そっくりな姉の後ろに隠れながら、恥ずかしながら、彼女はそう自己紹介をした。もう、だめです。ええ、好みのドストライクっぽいです。我ながらこんな女の子が好きとは思わなかったぜ。
「かわいいでしょ?」
「ええ」
再び妹に抱き付いた師匠の言葉に俺は頷く。むふふーと師匠は得意げに笑った。
「でも上げないよ♪」
「くっ・・・」
ぐむむ・・・と、唸りながら師匠を睨んでみるが、それはかえって師匠を喜ばせる結果になってしまったようだった。ちくせう。
「ふふん、君が、他の女たちがクーに劣っている事実に絶望する未来が見えるわね!!」
「あんた鬼か!?」
この人、俺の才能を見込んで弟子に引き入れたはずなのに、俺が絶望する未来なんて辿らせんなよ!俺はそう、心の奥底で叫んだ。
「さて、弟子をからかうのはこのくらいにして」
「え、ってことは妹さんを貰っていいのですか!?」
「それは別の話だよ!『炎球』!!」
少し怒った師匠から飛んでくる『炎球』を薄く小さく展開した『水壁』で軽くいなす。・・・しかし、妹云々はからかうとかそんな話ではないのな・・・。
「まったく、油断も隙もない」
「もちろん冗談に決まってるじゃないですか」
「なんだって!?クーが可愛くないっていうのかい!?」
「あんたは俺からなんて答えを引き出したいんだ!?」
やばい・・・、何がやばいってこれは、シスコンをこじらせ過ぎてめんどくさい姉になってやがる・・・。
というか、これが俺が相手だからよかったものを、もし魔法始めたての奴だったら『炎球』でこんがり焼けていただろう。おいしいわけもないが。
「ご主人様、そろそろお客様が・・・」
そんな風に俺と師匠が仲良く(?)会話していると壮年の執事がチラチラと俺の方を見ながら話しかけてきた。
「ん?あぁ、この子は今日からここに住むのさ。ボクの弟子としてね」
「そ、そうでございますか。ご主人様もついにお弟子を・・・」
後ろから声をかけてきた渋めな壮年執事が声を詰まらせ涙をにじませる。・・・え?なに?その反応。
「ふふん、喜びなよ。君はボクの記念すべき初弟子なのだから!」
「はぁっ!?」
驚くべき衝撃の事実。師匠は弟子をとったことがなかった。って、おい!
「ちょっと待って師匠!アンタ、初弟子にもうちょい気を使えよ!!仮にも王宮魔法使いの一人の初弟子が田舎の騎士爵家の息子!?普通そこは上流階級の貴族とかを弟子に迎えるべきだろ!?」
俺は声を荒らげてそう言った。それを見て師匠はあんぐりと口をあけ、執事はぎょっとしたように目を張った。あれ?なんかまずったかと思ったとき師匠は笑った。
「あはは!まさか弟子から叱られるとはね!いや、ボクも師匠として精進しないといけないね」
「いや、師匠として精進するもなにもアンタ師匠初だろ!?」
「ちがいないね!笑ったついでに言っておこう、ケインくん!」
その時、朗らかな雰囲気を一転。凄まじい気を感じさせる、堂々とした姿で口を開く。
「最初の弟子だからこそ気を使ってるさ。君のような逸材を探していた」
家からここまでダメな印象しかない師匠だったが、この時ばかりは震えた。
「最初の弟子に高貴な貴族の令嬢やら息子なんかを取る奴も多い。でもね、大抵そういうのに限って魔法についてはからっきしで、後々大成するであろう魔法使いとの結婚が目当てだったりするのさ。そして、それにまんまと引っかかった奴は他の魔法使いから軽蔑される。魔法使いとしての才能も見抜けないのか、とね。ボクは王宮魔導師だからこそ、そこに気を使ったのさ。たしかに、貴族家として地位が高い家ほど、高水準の魔法使いを集められるし、魔法の才能がある子供にすごい教育をすることもできる。だけどね、生憎とボクの目にかなう実力を持つ、あるいは持つであろう人物はついに現れなかったよ」
師匠はスッと目を俺の目に合わせた。その目には、名誉だとかそんなのはなく、ただ、純粋に魔法を極めんとする魔法使いとしての目があった。幸か不幸か俺は彼女の眼鏡にかなった。つまり・・・
「ふふん、安心しなよ。君はボクと同じ王宮魔法使いに、コネなしで入れる実力まで鍛え上げるからね!」
「・・・そうですか、そこまで考えての人選であれば俺・・・いえ、僕は何ももうしません。愚直に、師匠からの期待に応えることにします」
そういって俺は深々と頭を下げる。
「ケインジス・ラーデンス、ただ全力を以て、魔法の道に邁進することを誓います」
これが、後に演劇で有名になるシーンであったとかなかったとか・・・。
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その後、俺は白髪の壮年執事(名前はジールというらしい)に屋敷の中を隅々まで案内された後。割り当てられた部屋に到着した。そして、驚愕した。
「・・・おいおい、ガランドの部屋より広いんじゃあねえか?」
控えめに言っても現代日本の一般的なリビングルームを一回り二回りでかい部屋に、机とクローゼット、ベッドが置いてある、広すぎる部屋。どう見てもひとりでは使いきれない・・。というか、こんな部屋をポンと渡せるってことは、やはり王宮魔法使いってやつは稼げるッぽいな。
まあ、金なんて魔法の研究に消えていくって言ってる魔法使いがいたな。いや、知り合いではなく、その人の著書に軽く愚痴っぽい漢字で書いてあった。まあ、本売ってお金稼ごうとしてたんだな。お蔭で俺は、魔法的な意義としてはその本は失敗したが、魔法使いの生の生活が分かったって意味では成功したな。
「さて、と。しかし、俺もいよいよ、魔法使いに弟子入りか・・・」
ある意味、弟子だったのは家を出てからだったが、この家に来てようやく実感したのだ。前世では、あと数年で魔法使いになれたが、それはまた、別の話である。
「はてさて、明日からどんな修業が待ってるんだろうか?」
俺はそんな風に明日を楽しく考えて寝た。