(4)親友
「結城!」
「おっ、ナイスパス!」
ゴールは目の前。
いけるっ!
ザンッ
ネットが揺れた。
ピピッー
前半終了。
「ナイスゴール!結城!」
「いえ〜い☆」
「次も頼むな」
「え〜それはなぁ」
それは大変だ。
シュートは一人一回で充分さ。
「結城のシュートは確実だしさ!な?」
「うーん.......どうしよーかなー」
「じ、焦らすなよ〜」
あ、因みに今話してるのは、雨茂水樹。歳は一つ下だけど、一番仲の良い親友なんだ!
頭良くて、運動神経良くて。まあだからさ、シュートだって水樹が決めれば良い話?
それに顔も良し。
「水樹が決めればいいだろ。あ、誰かに応援されたいとか?」
「お、俺は......その......」
チラッ
水樹の視線の先にある人物なんて見なくてもわかる。
「お兄ちゃんナイスシュート!!頑張れえええええええ!」
我が愛しの妹、千早だ。
完璧でほんとに大切な水樹も、我が天使を盗もうとする嫌な奴、になりかけていることが不思議なことだ。
「よーし!!次もシュートするか!千早ありがとー!」
「千早パワーすげぇ」
なんて言いながらも、俺を羨ましそうに見ている水樹。
なんだなんだ、お前も応援されたいのかよ〜。
ピッ
後半開始。
「結城!」
「お」
でも相手も馬鹿じゃない。
パスをカットされてしまう。
まあ、別にいいけど。
「取り返してやる」
相手に追いつくと、ボールを取り合う。
取れる。
直感で感じた。
ガッ
ボールを踵で後ろに転がす。
「任せた、水樹」
後ろには水樹がいた。
「上がれ!結城!」
水樹からのパス。
水樹が走って、俺の顔を見てうなづく。
「そういうことか」
俺は水樹にパスをした。
また水樹からボールがくる。
そんなふうにしてどんどん上がっていく。
ゴールが直前に迫ってきた。
どっちが決める?
俺か、あいつか。
「水樹!!」
俺は叫んだ。
「おう!行くぜ!」
水樹がシュートした。
でも、キーパーの手に当たって跳ね返ってしまう。
そのボールの先には相手チームの奴。
やばい取られる!
思わず目をつぶってしまう。
ザンッ
でも、その瞬間聞こえたのは、ネットが揺れる音だった。
「え.......」
目を開けると、相手チームのゴールネットにはボールがあった。
「結城」
水樹に話しかけられた。
「な、なにがあったんだ?」
「おれが決めたんだよ、ゴール」
「えええええええ!?」
つ、つまりなんだ、追いついたのか!?
ボールに!?
そういえば、後ろにパスしたときも、かなり軽いパスだったのに取ってくれた。
「お前......足速いな......」
「.....そ、そうか?」
水樹が照れた。
この顔は......。
「千早と特訓でもしたのか」
「え.......な、なんで...」
「お前がそういう顔してるときは大抵千早関係なんだよっ!!」
かあ〜
一気に水樹の顔が赤くなっていく。
「水樹ちゃん!ナイスシュート!」
千早の声がした。
「お、おう!」
水樹の顔面ぶん殴っていいか。
「水樹ぃ?」
「なんだ結城......って顔怖えよ!!なんだよ今にも人刺しそうな勢いだなおいぃ!!」
「いや、お前を刺すなんて.....そんなこと.....」
「結城......」
「刺しはしないけど、殴ろうかな」
「!?うわぁ!!ちょちょ、お、落ち着けえええええええ!!!」