(1)へっ、どうせ地味女ですよ。
少女漫画で、めちゃくちゃかっこいいイケメンが、めちゃくちゃ地味な女(メガネとったら美少女系女子)に、積極的に話しかけ、やっほうリア充だぜっ!とかいうの見かけたことがある。
そんなのに憧れて、メガネをかけ始める地味女。
残念だったな。
そんなの所詮妄想なんだよ。
一応、「美少女」っていう条件があるんだよ。あ、こいつメガネとったら可愛いかも、とか思って近づいてんだよ。
そして、この世の中に地味女に話しかけてくれるような心優しいイケメンなんているわけねぇだろ。
周りを見てみろ、モブモブモブモブモブモブ!!!
わかってんだろ本当は。
「性格も顔もブスの男」で世の中の男子の85%は埋め尽くされてるってさ。
..........なんて。
勝手に心の中で語っちゃってる私ですが。
本屋で少女漫画を立ち読みした後、メガネ屋に直行してますよナウなのです。
ブラック・縁取りのやつ。
これさえあれば、私はメガネとったら美少女系女子になれるはず!!
カチャッ
試着。
「お、ぉお......」
感嘆の声が漏れた。
あ、やべ。店員の顔がひきつってる。
そりゃそうだ。
ってかおい。
私主人公だよな?一応。
なのに第一声がいかにも日常くるってま〜すてへ☆みたいな!?
って、なんだこの鏡に写ってる見覚えのある地味女。お前も世の中の負け組か。へっ可哀想な奴だな。
アホか自分だよ!!
「はぁ.......」
メガネを戻すと、笑ってみる。
鏡に写ってる女の顔は、そりゃもうひきこもってるぜイェイッ!な感じだった。
って待て。
ひきこもってるぜイェイッ!じゃねぇよ、自己紹介もしてねぇじゃん。
雨茂千早。
高校2年生。あぁ、この世の中の負け組である私を誰か救ってください。
漫才なら絶対ツッコミだ、それ以外は認めん、な私を救ってくれる.......人...いや、男か。いやいやいやイケメンがいい。性格も顔もイケメンの男の子。あ、ちなみに歳は同じくらいがいいかな。料理が上手くてニッコリスマイルで、モーニングコール?おぉ、いいなそれ。
「ぐ、ぐへへへ」
そんな妄想をしている私に、まるで人間とはまた違う生命を見るような目で店員が冷たい視線を向けた。
「あ、すいません」
本当は「すみません」なんだよな。
なんてくだらないことを考えてみたり。
まあいっか。
店を出る。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
なーんて用意されている台詞をそのまま読んだような決まり文句をかる〜く聞きながら。