してはいけない恥ずかしいこと
「涼くん、その格好って恥ずかしくない?」
お遊戯の時間、運動場に集まったみんなの中にひとりだけ、園服の裾から青いブルマーを覗かせている男の子が涼だった。これじゃまるで自分がおもらししましたと言っているようなものじゃない?
「ちょっと、恥ずかしい・・・」
「かわいそうね」
「でも、おしっこ漏らしてすっきりした」
「トイレでしたほうが、ずっとすっきりするでしょ?」
「ううん・・・パンツがすごくあったかくって、先生がちゃんと拭いてくれて、気持ちよかった」
涼はブルマーの上に両手をかざし、漏らしたときの素ぶりをしながら言った。
「もう、涼くんはこれなんだから、もっと男の子らしく・・・」
「ほら、どう?」
まるではしゃぎながら、くるりと一回りする涼がいた。服の裾がめくれ上がり、涼の穿いているブルマーがまる見えになった。
《涼のパンツ、かわいい》
沙織は思った。Vの形に包まれた、さっきおしっこを出したばっかりの涼の下腹部を見て、ちょっとドキッとした。これはエロチシズムなのだろうか?初めての異性との共同生活で感じる、初めての性への目覚めなのかもしれない、と。
《ううん、絶対にそんなことない。これは、してはいけない失敗なんだから、すごく恥ずかしいことなんだから・・・》
と、沙織はすぐに自分の気持ちを否定した。
《あれ、麻衣だわ》
着替え終わったばかりの麻衣が、あとから合流してきた。そして、涼と目をあわせたとき、ふたりで微笑みあうのを見た。
麻衣は、涼のとは色違いの赤いブルマーを裾から覗かせていた。お遊戯で女子がくるっと身体を一回りさせる場面では、まるで赤いブルマーに包まれた下腹部をみんなに見せつけるかのように、麻衣は大げさに回ってみせた。
「涼くん、私も・・・しちゃった」
「なんだ、麻衣も漏らしちゃったの? いつ?」
「さっき、楽器の時間の最後のほう」
「おしっこ、我慢できなかったの?」
「うん・・・」
涼と麻衣は、満面の笑みで見つめあった。
「赤いパンツも、カワイイね」
涼がそう言うと、麻衣はわざと園服の裾を両手でめくってみせた。おもらしした証しのブルマーが、麻衣の下半身を輝かせていた。
「麻衣、それって私おもらししました、って言ってるようなものじゃない?」
その輝きを認めたくなくて、沙織は意地悪にそう言った。
「しちゃいけない失敗をして、女子として恥ずかしいと思うんだけど」
「もちろん・・・恥ずかしい、けど・・・」
「ね・・・」
麻衣と涼が微笑みあっているのが気がかりだった。あんな恥ずかしい失敗をしたくせに、ケロっとしているふたりを見て、本当はどんな気持ちがしているのか知りたかった。
《おしっこなんて漏らさないのがいいに決まってる・・・》
でも沙織は自分にそう言い聞かせた。