麻衣ったら、いつも
そのことばかり気を取られていた沙織は、隣の麻衣の様子がおかしいのになかなか気づかなかった。
楽器演奏の時間がもうすぐ終わりそうになった頃、隣に立っている麻衣が鍵盤ハーモニカを持ちながら、そわそわしていた。麻衣も自分と同じ大人の姿だ。
「麻衣、どうしたの?」
「おしっこ、漏れちゃいそう・・・」
「え、はやくトイレ行っといでよ」
「もう我慢できない」
さっきまで普通にしていたはずの麻衣が、もう身体をくねらせながら両脚をガクガクとさせていた。
「どうしてさっき休み時間に行っておかなかったの?」
「涼くんが・・・ね・・・」
「おしっこ、しちゃったよね」
「だから、先生を呼びにいってあげたの。そしたらトイレに行けなくなっちゃって」
「もう、麻衣はいつもそうやって涼のことばっかり・・・」
「だって、おしっこしちゃって・・・かわいそうだから・・・」
「そうだけど・・・、自分のこともちゃんと考えなきゃ」
「もう、だめ・・・」
「ほんとにドジなんだから。人のことよりも・・・え、ちょっと、あぁ・・・麻衣!!」
沙織を切なそうに見つめていた麻衣の短パンから無数の滴が噴き出し、開いて立っている両脚の間にシャワーのように落ちていった。
《麻衣も、しちゃった・・・》
すぐに誰かが麻衣の手を引いて連れていき、沙織の隣には透明で大きな水たまりだけが残された。沙織が振り向くと、講堂の後ろのほうで、さっきの涼と同じように服を脱がされ、おしりを晒している麻衣が見えた。
《麻衣ったら、恥ずかしい・・・、しかも涼と同じ失敗をするなんて》
そう思いながら、沙織はなぜか焦りの混じった胸の高鳴りを感じていた。そして、時々振り返っては、麻衣の着替えの一部始終を見ていた。