男の子なら強く
ここは、いっぱい本が並んでる。
幼稚園の図書室みたい?
書架って、こんなに背が高かったっけ?
そうか、夢だからそう見えるんだ。
みんなの身体も私と同じ大きさなんだ。
だからみんな大人に見えるのね。
《ジャ・・・》
不意に水のこぼれ出す音がした。沙織が振り向くと、涼が短パンを穿いたまま、下腹部を両手で押さえていて、その手が透明な水で濡れて光っていた。
「涼くん、どうしたの?」
「おしっこ、我慢できなくなっちゃった・・・」
「どうしてトイレに行かなかったの?」
「ここに来て急にしたくなっちゃったんだ。でもここのトイレっておばけが出そうで恐いから、先生に連れていってもらおうと思ったのに、先生見つからなくて」
「意味がよくわかんない。それに男の子だったら、もっと強くなきゃ。そりゃ涼くんはやさしいけど、わたしは強い男の子が好きよ」
沙織に見られて、出はじめたおしっこを脚を擦り合わせながら必死で止めていた涼だった。でもそれも束の間、
《ジャァァァ・・・》
涼の手が再びふわっと濡れ光ったかと思うと、指の隙間から無数の水滴があふれ出した。
「あぁ・・・涼くん」
「おしっこ・・・しちゃった」
あきれる沙織をよそに、おしっこを漏らしながら、涼が聞いた。
「沙織はおしっこ漏らしたことないの?」
「ないわ。それは漏れそうになることはあるけど我慢するもん。おもらしなんて恥ずかしいじゃない? パンツだって脱がされちゃうし」
「先生、こっち・・・涼くんおしっこしちゃった」
先生を連れて来たのは麻衣だった。タオルやパンツの入った手カゴを持った先生は、沙織の前を通り過ぎると、ちょっと奥に入った書架の陰に涼を連れていき、しゃがんで涼のズボンを脱がせはじめた。
次の楽器演奏の時間が始まり、みんなはその場をあとにしはじめたが、まだ涼の周りには麻衣も含めて何人も残っていた。
《こんなに、みんなから見える場所で脱がされてたっけ?》
涼は先生の向こう側にいたが、裸にされた下半身がはっきり見えた。そして、濡れたところを先生にしっかりと拭かれていた。
《あんなに恥ずかしい姿を、人に見られちゃうなんて》
次の時間、講堂で鍵盤ハーモニカを演奏している間、沙織は何度もその光景を思い浮かべていたが、
《どうして? そんなこと気になるなんて、おかしいわ》
と、そんな自分の思いをすぐに打ち消した。