第10話 余波
戦いは終わった。
だが、
その“結果”は残り続ける。
HYDRA CHRYSALIS
新章:TRANSCENDENCE
第10話 余波
静かだった。
あれだけの戦闘があったとは思えないほどに。
風が吹く。
崩れた街をなぞるように。
水は、ほとんど消えていた。
いや――
“見えなくなった”だけだ。
「……終わったのか」
誰かが呟く。
その声に、
誰もすぐには答えなかった。
遠くで、
サイレンの音が聞こえる。
遅すぎる救助。
それでも、
動き出した現実。
「……生きてる奴、こっちだ!」
別の声。
人が集まり始める。
傷ついた者。
震えている者。
ただ立ち尽くす者。
そのすべてが、
この街の“結果”だった。
榊はその中心に立っている。
動かない。
ただ、見ている。
すべてを。
「……」
言葉は出ない。
出す必要もない。
理解しているからだ。
守れたものと。
守れなかったもの。
その両方を。
「榊……」
仲間が声をかける。
だが。
榊は振り向かない。
「……ああ」
短く答えるだけ。
それ以上は何も言わない。
その目は、
もう違う場所を見ている。
現実の“上”を。
その時。
足元に、水が揺れる。
ほんのわずかに。
誰にも気づかれない程度に。
「……いるな」
小さく呟く。
応えるように、
水が震える。
完全には消えていない。
当然だ。
“あれ”は消えるものじゃない。
存在そのものだからだ。
「……これからだな」
空を見る。
澄んでいる。
何もない。
だが。
確実に。
“ある”。
見えない層に。
別の世界が。
別の意志が。
そして。
別の“敵”が。
「……」
榊は目を閉じる。
一瞬だけ。
そして開く。
もう迷いはない。
「行くか」
誰に言うでもなく。
一歩踏み出す。
水がわずかに動く。
応えるように。
完全に。
共にある。
その時。
遠くで。
新たな異変が起きる。
ほんのわずか。
だが。
確実に。
空気が歪む。
「……始まったな」
榊が呟く。
小さく。
だが。
はっきりと。
これは終わりじゃない。
“余波”だ。
そして。
次の波が来る。
もっと大きな。
もっと深いものが。
世界はすでに。
変わっている。
もう戻らない。
なら――
進むだけだ。
その先へ。
さらに先へ。
そして。
その“起源”へ。
―――続く
第10話を読んでいただきありがとうございます。
一つの戦いは終わり、
物語は新たな段階へと進みます。
ここから先は、
さらに深い領域へ。
よければ次章も、
ぜひお付き合いください。




