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探究と破壊  作者: 星狼


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5/6

芸術なんてクソ喰らえ

「なぁ〜んだよ、この空間! さっぱりわかんねぇ! 何が面白ぇんだよ、こんな場所!」


突然の叫びが、静寂を切り裂いた。

美術館の空気に似つかわしくない、荒々しい声。

人々は一斉に振り返る。


——全裸だった。


男は全裸で、全速力で駆けていた。

筋肉質だがどこか頼りなげな体躯。

そして、何より目立つのは、勢いよく左右に揺れる、おちんちん。


「わからん!何、これ!ゴミじゃん!」


男は展示物を指さしながら、声を張り上げる。

一つ一つの作品に、容赦なく指を突きつける。

紙コップのケースも、キャンディの山も、すべてが標的だ。


「な、なんだよ、アイツ……」


「なんで裸なの……?」


人々の口から、ぽつぽつと漏れる言葉。

最初は戸惑いだったものが、徐々に、抑えきれない笑いへと変わっていく。


「待ちなさい……!君、待ちなさい……!芸術のことはわからなくてもいい……!せめて、服を着なさい……!」


後ろから、警備員が必死に追いかける。

脇には、脱ぎ捨てられた服とパンツが抱えられている。

男の足跡を追うように、警備員の息が荒い。


「ちょ、ちょっと……!」


「なんだよ、これ……」


笑いが、波のように広がった。

最初はくすくすと、やがて、腹を抱えて、肩を震わせて。


「うるせぇ!ここには裸の姉ちゃんの絵が沢山あるじゃねぇか!?俺と姉ちゃんの違いはなんなんだよ!? 今の俺の姿こそが芸術だ!」


男は止まらない。

展示室を横切り、階段を駆け上がり、

もう一つの部屋へ。

おちんちんが、自由に、激しく揺れる。


「おい、やべぇヤツがいるぞ!」


「これ、SNSで拡散しなきゃ!」


スマホが次々と構えられる。

フラッシュが光る。

笑い声が、美術館の白い壁に反響する。


心の底から湧き上がる、純粋な笑顔。

批評家たちの誇らしげな表情は崩れ、キュレーターの満足げな笑みは消え、学生たちの真剣な眼差しは、ただの子供のような輝きに変わる。


「待て〜! 待ちなさい! それは芸術ではない! 犯罪だ!」


警備員の声が、遠くに響く。


「俺は俺が思うがままに生きるっ……!芸術なんてクソ喰らえだ!」


全裸の男と警備員は、嵐のように去っていった。

残されたのは、静まり返った展示室と、まだ止まらない、人々の笑い声だけ。


ガラスケースの中の紙コップは、静かに影を落とし続けている。

キャンディの山の中の一粒は、赤い痕を残したまま、誰にも気づかれずに、光を反射している。


しかし、今、この瞬間、誰もそれを見ていない。

誰も、語っていない。

ただ、笑っている。

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