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第94話 案内をお願いします!

 大婆おおばば様と呼ばれている村の村長が病で倒れたのをきっかけに村の人たちが次々と魔力暴走を起こして倒れたらしい。


 治療法が分からず、とこに伏せるばかりで次第に衰弱していた。


 魔力暴走と連動するように土地が荒れ始め、私たちが先程目にした状態になったのだとルイスさんは語った。


「たった二カ月であそこまで荒れ果てるものなの?」


 ぽつり、とこぼすアリスにルイスさんは緩く首を左右に振る。


「私たちにもよく分からないんです。魔力が関係していると大婆様は仰っていたのですが、魔力に関して私たちはあまり多くを知らなくて」


 ダイニングテーブルに乗せた手をギュッと強く握りしめたルイスさんは俯いてしまった。


 それを見たアリスが何か悪いことを言ってしまったのだろうか、と不安そうに私を見つめる。私はアリスの肩に手を添えて首を左右に振ってルイスさんへ声をかけた。


「大婆様の言っていた魔力との関係は、魔力暴走を起こした人の中に土、水、風、緑等の魔力を持つ人がいたからだと思います」


「え?」


 顔を上げたルイスさんに私は簡単に説明を始めた。ウェネーフィカは土地の魔力を宿して生まれてくる。


 ウェネーフィカたちは体内に宿る魔力を使用することで自然界と体内の魔力を循環させていた。


 大きな土地であれば人口が多いから七割のウェネーフィカが魔力を使用しない事態が起こらない限り土地が枯渇することはない。


 けれど、この村の規模は小さい。村の半数が魔力暴走を起こしているのであれば、その分魔力の循環は止まるから当然枯渇していく。


「問題はなぜ、村長である大婆様が病で伏せった後に村の人たちが魔力暴走を起こしたのか、なんだけど」


 ルイスさんの話では大婆様は魔力暴走を起こしているわけではなく、一般的な病に伏せっているだけらしい。


 関係が分からない。自然と眉を寄せていた私にルイスさんが控えめに声を上げた。


「あ、あの。大婆様が関係しているのかは分からないんですけど、昔からの村の風習でこの村では月に一度村の奥にある石に触れる決まりがあるんです」


「石?」


「はい。カレナさんから見せていただいた透明な魔石に似ていますが、大きな石です」


 今度は私が目を丸くする番だった。待って、さっきルイスさんが透明な魔石を手にしていた時に驚いていたのはその石と透明な魔石を重ねていたからだったのか。


「もしかして、その石が村の人たちの魔力を吸収していたの?」


「かもしれない。大婆様とやらはその石の秘密と吸収した魔力の使い道を知っていた唯一の人だった可能性が高いわね」


「大婆様が?」


 私や師匠以外に透明な魔石に魔力を移せることができる人物がいるとは考えられないけれど、石事態に何らかの力が宿っていてその使い方を村の村長が代々受け継いでいる可能性はある。


 いずれにしてもその石を調べてみないことにはなんとも言えない。


「ええ。あくまでも可能性の話ですが。まずは石を調べるか、大婆様と直接会話ができればいいんですけど」


「石を調べるくらいでしたら案内出来ますけど」


「なら、案内をお願いします!」


「……カレナ?」


 アリスのとがめるような視線に私はぎくり、と肩を揺らす。


 いや、あのね、決して魔石かもしれないとか、魔力を吸収できる石の秘密を暴いて今後に活かしたいとか、あわよくば一部だけでももらえないかな~、とか考えているわけではないからね?


「い、石を調べれば魔力暴走の原因とか、土地の荒廃の原因とか分かるかもしれないじゃない? こうしている間にも魔力暴走は進行するんだから、急いで行きましょう! ね、ルイスさん」


「え、ええ。こちらです」


 腰を浮かして今にも扉へ向かおうとする私に少し、いや、結構引き気味のルイスさんが扉を開けて石が収められているほこらまで先導してくれた。


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