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第85話 神様が与えた力

 私が魔力を通しやすい身体だということは分かった。それが生まれつきなのか、赤子の頃にテリブの森に来た影響なのかは神様にも分からないらしい。


 生まれつきだった場合、魔力を通しやすい体質のアンスロポスが少なからず存在することになるけど、どうなんだろう。


「僕が君に何をしたのかだったね」


 私の考えを余所に神様は続ける。そうだった。アンスロポスである私に何をしたのかを聞いている途中だった。


「ルーシーと同じで魔力を通しやすい体質だと知った僕はまず君が魔力を視認できるようにしたんだ」


「私が魔力の流れを視ることができるのは神様のおかげだったの!?」


 特殊な力だな、とは思っていたけれどまさかこの魔力を視認できる力は神様が与えたものだったのか。


 元は師匠が一人で魔石獣の相手をするのが大変だから他に魔石獣と戦える人を用意する必要があった。


 そこにちょうど魔力を持たないアンスロポスである私が現れた。


 師匠は育てれば魔石獣と戦うことができると踏んで神様に魔力を視認できる能力を付与するように頼んだ。


 魔力を視認できるということは戦闘を有利に運べるのが理由らしい。


 そして、私は魔力を通しやすい体質だったため神様は他にも力を与えることにした。


「まず、ということは他にもあるの?」


「あるよ。君の体質からルーシーと同じことができると僕は考えた」


「同じこと?」


 疑問符を浮かべる私に神様は肯定するように頷いた。穏やかに微笑んでいるのに神様の表情は眉を下げていて少し悲しそうに見える。


「ルーシーの力はさっき言った通りだよ。分かっているね?」


「プロトポロスと同じでウェネーフィカから魔力を吸い上げて魔石に変える力を持っているという話?」


「そう。だけど、地上でそれを行えるのはルーシーだけだった。だから君の体質を知った僕は魔力を吸い上げて魔石に変える力を与えたんだ」


「どうして?」


 今となっては魔石が得られるから神様の与えてくれたこの力は私にとってはありがたいんだけど、なぜこの力を私に与えたのか疑問が出てくる。


「プロトポロスは地下にこもってしまって、地上でウェネーフィカが魔力暴走を起こす前に救えるのがルーシーしかいなかったからね」


 ふいに、私の脳内にアリスや騎士団の団員たちの苦しそうな顔が浮かぶ。アリスたちのような人たちを少しでも多く救うために神様は私にこの力を与えた。


 自分で生み出したとはいえ、魔力暴走で苦しむウェネーフィカを見るのは辛かったのだと、神様は膝の上で丸くなっているヘイエイを撫でながらうつむいた。


「だけど私が救うには限りがある」


 ぽつり、とこぼした言葉は神様にきこえていたみたいで神様は顔を上げた。


「いいんだよ。少しだけでもあの子たちが救われるなら」


「そっか。でも、まあ私は魔石が手に入るからこの力を与えてくれた神様には感謝してますよ?」


 少し暗くなってしまった神様を元気づけようと私は片目をつむり、いたずらっ子のように明るく言ってみた。


「ふふ、あははは。そうだね、僕もまさか君が魔石に関してこんなに興味を持つなんて思っていなかったよ」


 神様は少し目をしばたたかせた後、小さく吹きだして肩を揺らして笑った。


 雰囲気が明るくなるのはいいけど、純粋に魔石に興味を持っているだけなのにそこまで笑わなくても良くない? 


 少し? いや、かなり魔石が絡むと見境がなくなることはあるけれども!


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