第83話 カレナとルーシー
プロトポロスの役割が魔力暴走を起こしたウェネーフィカを鎮めるためだったとして、私はさきほど神様が言ったことが引っかかっていた。
「プロトポロスのことは分かったわ。ねえ、私と師匠が特別って本当?」
「ああ、うん。そうだよ」
あっさりと笑顔で肯定する神様に私は目をしばたたかせた。意外と軽いな。神様はヘイエイの前脚に手を差し込んで抱き上げて膝の上に乗せた。
膝の上で丸くなったヘイエイの背中を撫でつつ神様は話し始めた。
「地下に移ってしまったプロトポロスたちの様子を僕は知り得なかったからね。連絡役として創ったのがルーシーだよ」
「師匠が神様との連絡役?」
地下に移ったプロトポロスたちは地上に出ることができなくなった。
長い年月の末、地下での環境に身体が適してしまい、地上の環境に合わなくなってしまったらしい。
プロトポロスたちの様子を知ろうにも、地下までは神様でも様子を知ることができなかった。そこで創ったのが師匠であるルーシー・オーウェン。
ルーシーはプロトポロスと同じでウェネーフィカから魔力を吸い上げて魔石に変える力を持ちつつ、神様のいるテリブの森と地下とを往復できる身体を持った特別な存在だ。
テリブの森には魔石獣がいるためルーシーはアンスロポスと同じで魔石を使って一人でも戦える術も持っていた。
「師匠が強すぎると思っていたけど、神様が直接創ったのなら納得だわ。じゃあ、師匠は人ではないの? ……私も?」
神様はヘイエイの背を撫でる手を止めて私を見た。
師匠が年齢不詳なのは単に童顔だからだと思っていて、年を取らないことをからかっていたけれど、神様が直接創った存在なのであれば納得する。
でも、じゃあ師匠と同じで作られた私も人とは違うの? アランの顔が浮かんで胸がギュッと締め付けられたみたいだった。なんでこんな気持ちになるのかわからない。
でも、不安そうな顔をしてしまっていたのだろう。
一瞬、息を呑んだ神様は小さく笑って緩く首を左右に振った。
「しばらくはルーシーに連絡役を任せていたんだけどね、テリブの森に来たルーシーが僕に〝一人で魔石獣の相手はめんどうだからもう一人創れ〟って訴えてきたんだ」
「そんな理由!?」
師匠らしい、といえばらしいんだけど、なんだか拍子抜けしてしまう。まあ一人で魔石獣の相手は大変なんだけど。
私はヘイエイと戦ったことを思い出して肩をすくめた。
「ははは。生みの親の僕に対しても物怖じしないのがルーシーだからね」
「それで神様は私を創ったの?」
神様は頷いて「ただ」と付け加える。
「ルーシーのように一から創ってはいないんだ」
「どういうこと?」
私は疑問符を浮かべる。師匠とは違う存在の私はなんなの? 神様は私の表情を察して続きを話した。
「君はこの森に捨てられていたアンスロポスの赤子に僕がいろいろな力を与えた存在なんだ」




