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第80話 昔話をしようか

 最初の魔石獣の化石の体内を通って心臓部まで移動した神様は「ここでいいかな」と魔石の上に腰かけた。


「きみもそこに座ったらいいよ」


「えっと、では失礼して」


 促されて近くの石の上に腰かけた。ヘイエイが私の足元に来て丸くなる。それを見ていた神様はアメジスト色の瞳を細めて柔らかく微笑んでいた。


「さて、昔話だったね。この森ができた理由をきみは知っているかい?」


「いいえ。まったく知らないわ」


 緩く首を左右に振る私に神様は昔話を始めた。


 森ができる前、この土地には魔素があふれていた。魔素は本来生物にとっては毒であり、吸収しても体内で分解でないため生物は魔素の濃い土地では生きられない。


 そんな土地の管理を任された神様は頭を抱え、まずは魔素をどうにかしなければと考えた。そこで神様は魔素を吸収して体内で分解できる生き物を創ることにした。


 それが魔石獣なのだという。魔石獣は神様の想像通りゆっくりと土地の魔素を吸収して体内に蓄えた。魔素を分解して魔石を生成するうちに周囲の魔素は減っていった。


 神様は他にも魔石獣を創って数体の魔石獣たちで数百年かけて土地の魔素を吸収した。魔素がなくなる頃には最初の魔石獣は役割を終えて生命活動を終える。


 その魔石獣の身体からは大量に魔素から変換された魔石が出てきた。魔石は空気に触れて力を発揮しだす。


 緑の魔石は植物を、青の魔石は水を呼び少しずつ森が形成されていった。


「森ができたのに魔石獣が生まれるのはなぜ? それに人間に魔力持ちとなしがいるのは?」


 私は興味が先走り、神様に矢継ぎ早に質問していた。


「ふふ、ははは。きみは本当に魔石が好きなんだね。ああ、うん。そうだね、きみはやはり……」


 神様は目を丸くしながらも嫌な顔はせずにむしろ嬉しそうに微笑むと続きを話してくれた。


 いや、待って。今気になること言わなかった!? 質問しようにも、神様は上機嫌に語り始めてしまった。


 魔素がなくなった土地に森ができて、神様は土地の管理を任されたまま他の土地と同じように動物や人間の営みに憧れた。


 そこで神様は動物を創り、次に人間を創ろうと考えた。けれど問題が浮上した。魔素がなくなっても、森には魔素を取り込んだ魔石がある。


 魔石獣たちの化石から生成された魔石は大量の魔力を帯びていてその魔力は強く、まだ人間や動物が生きるには厳しい環境だった。


 頭を悩ませた神様は次の魔石獣を創ることにした。


「これが今、この環境下にいる魔石獣たちだね。ヘイエイもその一体だよ」


「この子もあなたが創ったの?」


「そうだよ。ね、ヘイエイ」


 笑みを向けてくる神様にヘイエイが応じるように元気よく鳴く。半信半疑だったけど、自称神様は本当にこの土地の神様なのかもしれない。


「おや、その顔は信じていなかったね?」


「あ、あははは」


 目を細める神様に私は頬を引きつらせる。いや、だって自分から神様だよ、なんて言う人のこと本当の神様だって一発で信じられる人いる?


「まあ、いいや。続きを話そう」


 肩をすくめた神様は小さく笑いながら続きを話し始めた。


 新たに創られた魔石獣たちは魔石から少しずつ魔力を吸収していき、新たに魔石を生成した。その魔石の濃度は薄まっていて私たちが採取し使用する程度になった。


 予想通りの結果になったことで神様はようやく動物と人間を創造することにした。神様はこの特殊な環境に合わせて三種類の人間を創ることにした。


 一人目がウェネーフィカ。この土地の魔力を体内に宿している人間。


 二人目がアンスロポス。魔力を有さないアンスロポスは魔力を持たないかわりに魔石を使うことができる術を身につけた。


 三人目がプロトポロス。私たちが開拓者と呼び、地下で暮らしていた人たちだ。

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