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第73話 変化と嫉妬

 アリスとのお茶会を終えた私は部屋へと帰る途中の廊下でアランと会った。そりゃあ、まあ部屋が隣なのだから会うこともあるだろう。うん。


「こんばんは」


「こんばんは。アリスとお茶してきたんだろう?」


 なぜ知っているのか。いや、トムさんから聞いたのかな。


「はい。久しぶりだからとアリスから誘いを受けましたので」


「そうか。はははっ」


 うぉお、急に笑うのは反則だって。驚いた。


「あの、笑うところありました?」


 私の問いにアランは咳払いをすると表情を普段通りに戻す。


「すまない。アリスがきみを誘いに来ていたことを思い出していた」


「ああ、そういえば部屋に迎えに行ったと言っていましたね。そのときには私も浮かれていて先に談話室に行っていたのですが」


 迎えに行ったのに、と頬を膨らませていたアリスの顔を思い出して私は小さく笑った。


 私の表情を見たからなのか、それとも浮かれて談話室に行ったと聞いたからなのか、アランがヘーゼル色の目を見開いていた。


「あの、なにか?」


「いいや。きみでも魔石以外で浮かれることがあるのか、と思っていた」


 言われてみれば私が魔石以外でテンションが上がるなんてあまりない。アランに言われて気付いた。


 アリスはサリー以外に出来た友だちで、身分の違いを感じさせないくらい話しやすい。私の魔石語りを楽しそうに聞いてくれる珍しい数少ない友だち。


 だからアリスと久しぶりにお茶が出来ることが純粋に嬉しかった。学園リマリパテにいた頃から考えると、ここに来てからずいぶんと私も変わったな。


「その顔は気付いていなかった、という顔だな。アリスやこの屋敷の者たちと関わるうちにきみに変化をもたらしたのだろうな」


「そう、でしょうか?」


 実感はあまりないけれど、アランの言う通りウォード家に来てから魔石の研究は続けているけれど、学園とは違い関わる人が増えた。


 休憩時間になると、エリナーたちがお茶に誘いに来ることが増えた。


 サリー以外と親し気に話すことがなかった私にとっては新鮮で、人との関りが楽しいものだと学んだ。黙って眉を寄せている私にアランが苦笑する。


「ああ。……アリスたちが羨ましいよ」


 アランの言葉に私は目を丸くした。羨ましい? 羨ましいって言った今!? 


「羨ましいんですか!?」


「あ、いや。今のは気にしないでくれ。俺の独り言だ」


「気にしないでくれと言われましても、しっかりと聞こえていましたので」


 詰め寄る私にアランが片手で口元を覆いながら後ろに下がる。私は後退するアランに一歩、また一歩と歩み寄った。


 ジッと見上げてアランを見れば、彼は観念したように肩をすくめる。


「きみに変化をもたらしたのが俺ではないのが少し悔しい、と思っただけだ。たったこれだけのことで妹にまで嫉妬してしまう」


 小さい男だろう? とアランは眉を下げた。アランも嫉妬することがあるのか。何度も瞬きを繰り返した私はようやくアランの言葉が浸透してきた。


 理解した途端に頬に熱が集中し始めて私はアランから詰め寄った分後ろに下がった。


「ア、アラン様が嫉妬ですか!?」


 顔が熱い。私は熱を冷ますように手で仰ぐ。


「顔が赤いな? 疲れでも出たか?」


「そんなわけないです! って、近いですアラン様!」


 模擬戦程度で疲れるわけがない。顔が熱いのはあなたのせい! 私の不調を心配したアランが熱を測ろうと近づいて手を伸ばしてくる。

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