第68話 レティーシャ・マリー伯爵令嬢について
レティーシャ・マリー伯爵令嬢はアランとの婚約パーティーに来ていた女性だ。水色の長いウェーブのかかった髪と、胸を強調したドレスを着ていた美人。
うーん、豊満な胸しか印象に残っていないけど、ヘイエイと出会わせてくれたから私の中ではいい人判定なんだよね。
「レティーシャ・マリー伯爵令嬢はアラン様とあんたの婚約が気に入らなくて、あんたに嫌がらせをしようと思ってたみたい」
「へぇ……。それでヘイエイを放ったの?」
私の問いにサリーは首を左右に振った。疑問符を浮かべる私にサリーは続けた。
レティーシャ・マリーはアランと私の婚約に反対していたが、自分の力ではどうすることもできなかった。
そこでレティーシャは魔石に執着している私に狙いを定めた。
魔石に関することで失態を犯す姿をアランに見せれば失望するだろうと考えたレティーシャの元に一人のアンスロポスが現れた。
その男はレティーシャに魔石獣の幼体であるヘイエイを渡し、婚約パーティーで私にプレゼントするよう提案したそうだ。
魔石獣の幼体は制御することができなければ、無差別にウェネーフィカから魔力を奪う。
そんな獣をアンスロポスである私に送ることで私が制御することができず、アランたちに迷惑をかければ婚約破棄されるだろうと安易に考えていたらしい。
その男のことは記憶があいまいになっているようで、詳しくは分からず王宮側で調べている途中だ。
レティーシャは言われた通りにヘイエイに餌をやり、私たちの婚約パーティー当日まで管理していた。
当日になり、従者がヘイエイを運んでいるところで突然ヘイエイの様子がおかしくなり飛び出した。
それを知らなかったレティーシャは巨大化したヘイエイが暴れていると聞いてひどく動揺していて、その姿を私が見たのか。
「レティーシャ・マリー伯爵令嬢は今回の件をひどく反省しているみたいよ。あんたとアラン様に謝りたいって」
「そっか。レティーシャ伯爵令嬢、ちょっと嫌味っぽかった人だったけど、ヘイエイと出会わせてくれたから会ってみたいかな」
別にレティーシャに対して怒りの感情はない。
むしろ久しぶりに魔石獣の幼体と戦えたし、ほぼ無力化した魔石獣の幼体を傍における機会を与えてもらえたから感謝しているんだよね。
ヘイエイの毛はふわふわで撫で心地はいいし、仕草が可愛いしで魔石獣の幼体だということを忘れるくらい癒されてるから一度は感謝を伝えなければと思っていた。
「会ってみたい、ね。あんたらしいわ」
サリーがはははっ、と声を上げて笑う。
「会ったらなんて言うつもりなのよ」
「え? そりゃあ、まずはお礼を言うつもり!」
「お礼……。レティーシャ・マリー伯爵令嬢がドン引く姿が容易に想像出来るわね」
たしかに。謝罪に来たつもりのレティーシャが逆に私からお礼を言われるなんて想像もしていないだろうから、別の意味で動揺するだろう。
少し気の強そうなレティーシャが困惑する姿を想像して私もサリーにつられて笑った。




