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第59話 短剣の使い道

 ロッドの魔力は土を操るもの。土は盾も作れるし、敵の足場を崩せるし、魔力量によるけれど、魔力を込めれば地面から槍のように相手を突き刺すこともできる。


 私も魔石は持っているけれど、数は少ない。正直欲しい。じゃない。今はロッドとの戦闘に集中しないと。


 今のところ見てきたロッドの使う土の魔力は盾を作り、足場を泥のようにするもの。他はアランとの戦闘では剣を使っていた。


 本人の性格にもよるのだろうけれど、余裕があるように見えるのはまだ何か隠しているのだろう。


「カレナ様が使うのは風、水、氷の魔石なんですよね。複数同時って大変じゃないです?」


「そうね。集中力は必要よ」


「それでもマーティンとあれだけ戦えるんだからすごいですよね」


 褒められているのだろうか、それともこちらの集中力を欠こうとしているのか。私は警戒を怠らず、ロッドに意識を集中させた。


 ロッドの魔力の流れを視れば、両足に魔力が集中していた。つまり


「褒め言葉をありがとう。そう言ってこちらの意識をそらそうとしているのかしら?」


 一瞬ロッドが目を丸くした。図星だったのだろう。すぐに笑顔を作ったロッドに私は後退した。私の立っていた足元は泥のようになっている。


 あのまま立っていたら足をすくわれていた。たぶん、泥に足を沈めて固め動きを封じるつもりだったのだろう。


「あーあ。やっぱり避けられちゃいますか」


 残念そうにロッドが肩をすくめる。そうしながらもロッドの手に魔力が集中しているから何かしら仕掛けてくるつもりだ。私は元いた自分の足元を見た。


 泥か。泥なら水分を含んでいるな。私は水を出現させると水塊を泥に沈めた。跳ねた泥がこちらにかかる前に凍らせて風でロッドの方へ飛ばす。


「うわっ!」


 細かい泥氷の粒にロッドが怯んでいる間に私は水を含んだ泥に氷の魔石を使った。すぐに氷柱が出来る。


「僕の泥の盾と少し似ていますね。ご自分を守る用、ではなさそうですね」


「さあどうかしら」


 私は口元を吊り上げた。ロッドが再び両手に魔力を集中させて身を屈めた。両手を地面に付けた瞬間、地面からいくつもの土の槍が出て氷柱に突き刺さる。


 ぶ厚めの氷柱じゃなければあっという間に突破されていた。あっぶな。


 土の槍が効かないと判断したロッドが剣を抜いてこちらに向かってくる。私は水の矢をいくつも出現させてロッドへ向けた。


 すべて弾き落としたロッドの動きが少し鈍る。私はロッドから距離を取るべく走り出した。ロッドが私の行く手を阻むように地面を泥に変えていく。


 それを避けていたが、途中で足を滑らせてバランスを崩した。


「っ」


 地面に手を付いて受身を取った私は片膝をついてロッドを見る。すぐ間近にロッドの剣が私に迫った。


「カレナ!」


 マーティンと剣をぶつけあっていたアランの焦った声を聞きながらも私は冷静に氷の魔石を発動させた。


 周囲に冷気が立ち込めた瞬間、ロッドの周囲に氷の槍が現れる。それはロッドの動きを封じるには十分だった。


 剣を持つロッドの袖に槍の先端が引っかかっている。もがけば槍の先は簡単に折れてしまう。


「泥以外の場所からも氷が……なんで」


「さっき自分で弾いたじゃない」


 私は立ち上がりながら短剣を抜いた。私が放った水の矢をロッドはすべて弾いた。


 弾かれた水の矢は地面に落ちていくつもの水溜まりを作っていたけれど、ロッドはそれに気付いていなかったようだ。


「あの時の!」


 悔しそうな顔をしながらもロッドはもがいている。もう少しで氷の槍が折れそう。私は短剣に水をまとわせた。


 ロッドとの間合いは通常の剣を構えて一歩踏み込んだあたり。


 ロッドが身をよじった反動で氷の槍が折れた。自由になったロッドが剣を持ち直して私に向かって一歩踏み込んだ。


「甘い!」


 それよりも早く私は一歩踏み込む。短剣に水をまとわせ、瞬時に凍らせた剣はロッドの剣が届く前に相手の喉元に剣先が触れた。


 剣を持ったまま動けないロッドの喉が鳴る。一歩でも動けば喉に刺さると分かっているのだろう。汗がロッドの顎から滑り落ちた。


「そ、そこまで! 勝者アラン様、カレナ様!」


 片手を上げたアレックスの声が演習場に響いた。

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