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第43話 お礼

 エリナーからおおよその事情は説明を受けた。


 気を失った私をアランがエリナーたちの避難したウォード家所有の別荘に運んで、手当と着替えはエリナーたちによって行われた。


 ベッドに寝かせたところでアランが付き添いを申し出て朝まで一緒に寝ていた、というのが実際のところだ。安心した。何もなかった。


「エリナー、用事があったんじゃないの?」


 呼びに来たという事は用件があったはずだ。


「はい。朝からお二人のイチャつきを見てしまい一瞬頭が真っ白になりました。申し訳ありません」


「ごめん、エリナーそれは一旦忘れよう」


「昨日の魔石獣の幼体襲撃の件ですが、けが人は多数出ているものの死者数はゼロとのことです。また、未明から夜明け前にかけて王宮騎士団と研究員たちにより魔石と魔石獣の幼体が回収されました」


「はぁ!?」


 思わず前のめりになる。誰が苦労して魔獣やヘイエイと戦ったと思ってるの! 何もしていない人たちに横取りされるなんて許さない、と怒りをあらわにしかけて私はふと冷静になる。


 いくらなんでも王宮の騎士団と研究員が来るのが早すぎる。誰かが報告しない限り。アランは王宮に出入りしているけれど伝えている余裕はなかった。


 一人だけ該当する人物がいる。


「ねえ、サリーは?」


「それが見当たらないの」


 しょんぼりと眉を下げるアリスの頭を撫でた私は嫌な予感が当たった気がして溜息を吐きそうになる。


「お取込み中失礼いたします。アラン様、カレナ様お二人に王宮から召集がかかっております。書状もこちらに」


 トムさんが持って来た書状に目を通したアランが私を見た。


「分かった。すぐに用意する。カレナ行くぞ」


「行くって今から王宮にですか!?」


「ああ。魔石と魔石獣の幼体を取り返したいのなら来いとさ」


「行きます」


 即答した私はベッドから降りた。足の痛みは昨日よりかはましだ。私はエリナーたちの用意してくれた正装に着替えてアランと共に王宮へと向かった。




 王宮に来るのは初めてだ。門番もアランを見てすぐに中へ通してくれる。


 王への謁見までにはまだ時間に余裕があるため私たちは用意された応接間で待つことになった。朝以来の二人きり。


 気まずい。


 話題を探そうと部屋中を見回してふと、アランの手元に視線がいく。


 彼の手は昨日のヘイエイとの戦いによって傷がついていた。傷は塞がっていて血も出ていないが、私を助けに来なければ付かなかったものだ。


 そう言えば私はまだお礼を言っていない。


 私はアランの手に自分の手を重ねて相手を見上げた。


「カレナどうしたんだ?」


「アラン様、私まだお礼を言っていなかったですよね。あの時助けに来てくれてありがとうございました。とてもかっこよかったです」


「君を守るのはその、当然というか。とにかく無事でよかった」


 アランが私の手を取り彼の口元に引き寄せたと思えば軽く口付けをした。そのまま力を込めて引き寄せようとした途端、扉が開く。


「王宮で堂々とイチャつかないでくれる?」


 聞き慣れた声に私は視線を扉へと向けた。


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