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第177話 オレはアンタに協力するよ

 処刑前夜にアルベールは何者かに牢屋から連れ出された。


 処刑を免れたアルベールが連れてこられたのはアンスロポスの領。


 彼らはアルベールの石化の魔力を戦に利用しようとしていたらしい。


 だけどアルベールは石化の魔力を利用される前に領から逃げ出した。


 行く当てもないままさまよっているアルベールを捕えたのがセオドアたちだった。


 セオドアたちはアルベールを捕えたあと牢に入れた。


 石化の魔力を持っていると知ったセオドアは太古の魔石獣の血液を石化することを思いつき実行に移したのだと話した。


「アルベールを生かしていたのは太古の魔石獣の血液を石化させるためだったんだよ。怒ってもいい、罵ってもいい。殴ったって構わないよ」


「……」


 セオドアの話を黙ってアルベールは聞いている。


 怒りの感情はアルベールからは感じ取れない。


「太古の魔石獣の血液を石化させてそれを砕いたのを薬に混ぜて配ったのね」


「そうだよ。太古の魔石獣の血液は体内で溶けて魔力暴走を引き起こすみたいなんだ。……それで苦しんだ人がいたことも分かってる」


 私は言いたいことを呑み込んだ。


 少なくとも私が出会ったカヤ様、ジャック、ルイ、ティエリーたちは薬で苦しんでいた。


 みんな生きているから良いけれど、魔力暴走を起こして廃人になってしまった人だっているかもしれない。


 私は深く息を吐きだした。


「それも太古の魔石獣を倒すために必要なことだったってこと?」


「……」


 視線をそらしたセオドアの隣でルネが泣きそうな顔で下唇を噛んだ。


「太古の魔石獣をどうにかできたらそのときはあなたたち二人ちゃんと告白して償いなさいよ」


 頷いたセオドアとルネから私はアルベールへ視線を移した。


「アルベールはどう思う?」


「どう、とは?」


 静かにアルベールが聞き返してくる。


「アルベールを太古の魔石獣に合わせたってことはもうあなたを解放するって意味もあったんでしょう」


 たぶんセオドアはアルベールを太古の魔石獣と引き合わせて魔力暴走を引き起こして私に太古の魔石獣の力を示したかったんだろうな。


 セオドアたちがこんな手段しか取れなくなったのはどんなに口で説明しても信じてくれず、助けを求めても誰も救いの手を差し伸べてくれなかったからなのかもしれない。


「見捨てるでしょ」


 感情のこもってない声で言っていたセオドアを思い出した。


 あれは何にも期待していない声だったんだろうな。


「今なら眼を隠さなくていいんだからアルベール、あなたは自由でしょ」


「そうか。眼を隠さずに生きていけるなんて考えたことがなかったからな。この先に未来があるなんて想像もしていないな」


 アルベールが苦笑する。


 眼を隠していた頃は視界が閉ざされていたから自由に歩けるとは思っていなかったんだ。


 アルベールはこの先どうするんだろう。


 ユーベルが領に帰るときにアルベールも一緒に連れて行ってくれないかな。


 まあ、アルベールの選択次第なんだけど。私はアルベールの次の言葉を待った。


「オレはアンタに協力するよ。あの太古の魔石獣を殺さずにどうにかしたそうに見えるからな。オレはアンタに救われたんだ。アンタのやりたいことを手伝うよ」


「私の?」


 予想外だった私は目を丸くした。


 アルベールが協力してくれるならやれることもあるだろうし、それに。


 石化の魔力についてはまだ研究がされてない。


 ここで別れれば石化の魔力を持つ人にこの先出会える機会なんていつになるか分からないからアルベールがまだいてくれるなら助かる。


「ほ、ほんと!? 協力してくれるの!?」


「ははっ。そんなに驚かなくてもいいだろう。恩人に協力するのは当たり前のことだろ?」


 アルベールが眉を下げて笑った。


「ありがとう、アルベール。よろしくお願いするわ」


「ああ。オレにできることは最大限協力する」


 アルベールの協力を得た私はセオドアとルネを見据えた。


 私はこの二人にも協力してほしい。


「セオドア、ルネ。私は太古の魔石獣を殺すんじゃなくて、別の方法でここから退かせたい。もちろんウェネーフィカの領で被害も出したくない」


 二人は碧眼で静かに私を見つめ返した。


「だから、二人にも力を貸してほしいの。太古の魔石獣を殺さず、ウェネーフィカの領にも被害を出さない方法を一緒に考えよう」

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