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第169話 アルベールの魔力暴走とレティーシャの加護

 石化の魔力を持つアルベールの瞳はルビーのようなきれいな赤色だった。魅入ってしまった私は逃げることができずにいた。


 足が、身体が動かない。


 石化の魔力を受けて私も石化してしまうのだろう。あーあ。私もここで終わりか。アラン、心配しているだろうか。ううん。きっと探してくれている。


 サリーは無事かな。アリスも泣かせちゃっただろうな。最後にみんなに会いたかったな……。私は石化を覚悟して目を閉じた。


「……?」


 身体に変化を感じられない。私は首を傾けた。ん? 首が動く? というか、なんか手元が眩しいんだけど。


 私は手元を見た。淡く光っている。


 どういうこと? 私にはこんな力ない。でも。この魔力を私は知ってる。私は記憶を辿った。


「今、カレナ様に私の加護の魔力を与えました」


 レティーシャが私の手を握って加護の力を与えてくれたときのことを思い出した。


「カレナ様は行動力がありますから、これから先お怪我をしないように。私の力では不足かもしれませんが、少しでもお役に立てればと」


 そうだ。王宮の庭園でレティーシャが自分の魔力について知った日。彼女が初めて自分の力を使ったのが私相手だったんだっけ。


 王家に連なる人たちの力は加護のはず……だったんだけど、これは違う。


「レティーシャの魔力は加護じゃない」


 石化の魔力を受けても私は無事だった。加護は怪我や不運から護るだけだ。石化までは防げない。


 でも、今アルベールの石化の魔力から私を護ってくれた。ううん、違う。護ったんじゃなくてこれは無効化したんだ。


 どこも石化してないのがその証拠。私は魔力暴走を起こして苦しんでいるアルベールを見上げた。


「ぁ……、うっ……ああ……!」


 目元を押さえてうめき声を上げ続けているアルベールに向かって私は走り出した。


「カレナ! 戻れ!」


 背中から聞こえるセオドアの声を無視して私は包帯を拾ってすぐにアルベールの目元を覆い隠した。手早く後頭部で結んでアルベールの両肩を掴む。


「アルベール、しっかりして! 今から魔力暴走を抑えるから、それまで意識を保って!」


「……、っ、……!」


 奥歯をきつく嚙みしめていたアルベールは少し落ち着きを取り戻したみたい。私はそっと息をついてアルベールの腕を引っ張って階段を上がった。


「セオドア! あなたもついてきて! 早く!」


「う、うん」


 目が覚めた太古の魔石獣を背に私たちは地上に向かって駆けた。


「はあ、はあ、はあ……、っ!」


 地上の明かりが見えてきた。全力で階段を駆け上がったからか、私もアルベールも息が切れている。


 セオドアはあまり体力がないのか、途中で息を整えているところだ。


「セオドア、早く来なさい」


 うなだれているセオドアに声をかけると恨めしそうな目で返される。


「ぜえ、ぜえ……っ、カレ、ナみたい、に体力がある、わけ……ない、だろ……」


 追いついたセオドアが地面に両膝を付いて息を切らせている。


 そんなこと言われても魔石の研究者ならフィールドワークだって必須なんだし、これくらいで根を上げてるなんてセオドアもまだまだね。


「息切れしているところ悪いんだけど、アルベールの魔力暴走を鎮めたいから研究室に案内してくれない? できれば私の鞄があるところがいんだけど」


「……分かっ、た」


「アルベール、今から助けるから。それに、もしかしたらあなたの眼をなんとかできるかもしれないわ」


 太古の魔石獣から離れたからか、アルベールの魔力暴走は少し落ち着いていた。でも、魔力の流れを視ていると、眼に魔力の滞りが集中している。


 このまま放置すればアルベールは失明してしまうだろう。そして、魔力を使うことができなくなっていずれは廃人になってしまう。そんなこと絶対にさせない。


「アルベールの眼をなんとかできるって?」


 ようやく息が整ったセオドアが問う。私は口角を上げた。


「ええ。ちょっと道具が必要だからセオドアたちにも協力してもらうことになるけど」


「僕たちに?」


「そうよ。アルベールを巻き込んで危険な目に遭わせたんだからそれくらい協力しなさい」


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