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第16話 彼は感情表現が苦手、らしい

ジェームス様たちの心配をよそにアランはなぜか私の名前を聞いて今までと違う反応を見せた。婚約話もあっさりと了承してしまった。


 二人は驚きながらもこの機を逃せばアランは一生結婚しない、孫の顔も見られないと判断して政略結婚と説明して私に伝えるよう指示をしたのだと話した。


「……」


 反応に困った。概ね婚約の理由は聞いていた通りだったけど、逆かぁ。そうじゃなくて、一つ疑問が浮かぶ。


「あの、アラン様が拒否権はないとおっしゃっていたのですが」


 口にした途端、ジェームス様たちはキョトンとして顔を見合わせる。


 あれ? 断ろうとしたら君に拒否権はないって言ってたよね。


 自信がなくなってきた。アリスの方を見ると笑顔を向けてくる。ちょっと待ってその笑顔はどういう意味?


「はははっ」


「ふふふっ」


 ジェームス様たちが笑い声をあげる。


 ケイティ様は口元を覆っているが、笑っている。二人はひとしきり笑うと安堵したような表情を見せた。


「すまないね。あの子は感情表現が少し下手なところがある。拒否権はない、と言うよりは君たちを守るためには今のところこうする以外に方法がない。かと言って、他の貴族に君を嫁がせたくないと思ったんだろう」


 なんで? と次の疑問が浮かぶ。


「簡単に言えば君に拒否権はない、ではなくて君たちを守りたいから拒否しないでほしいいということよ」


 なるほど、分かりにくい。


 いや、分からない。


 どうしてそこまでしてくれるのか理解できない。


 他の貴族から批判だってあるだろうし、婚約話を持ち掛けていた令嬢たちだって不満があるはずだ。


 アリスを助けたお礼だったら私は喜んで辞退するのだけれど、それだけじゃなさそうだし、ジェームス様たちの言うことが本当ならアランとちゃんと会話をしないといけない。


 感情表現が苦手って言っても限度があるでしょう。もう少し分かりやすく言ってくれればいいのにと思う。


 溜息を吐きたくなるのを堪えていると、ノック音が聞こえて使用人が入ってきた。


 ジェームス様に耳打ちするとすぐに立ち上がる。急用が入ったようで二人は私たちにゆっくりするように言うと部屋から出て行った。


「緊張した」


「私も。というか、私は来て良かったの?」


「サリーも呼んだのだから当然でしょう。カレナ、ごめんね。お兄様のこと知っていたのだけれど、口止めされていたの。お父様たちが話したことお兄様には黙っていて」


「え、あ。うん」


「あの言い方だとアラン様ってカレナのこと」


「あー、わー。サリー言っちゃダメ! まだカレナは気付いてないし、鈍感なんだから」


 何気に酷いこと言わなかった? 今。鈍感ではなくて、恋愛経験がないだけだと言ってほしい。


「そんなことより、紅茶のお代わりはどう? ほら、クッキーもどうぞ」


 誤魔化すように口早に言うアリスはクッキーを一つ掴むと私に差し出した。


 驚きながらも受け取って口に入れればサクサクとした食感とほどよい甘さに虜になる。


 いつの間にか私たちは紅茶とお菓子を食べながら採寸に呼ばれるまで雑談をした。

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