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第146話 背中合わせの魔獣退治

 アランと背中合わせになった私は魔獣の数を目視で確認する。私の視界に映る魔獣の数は五体。


 魔獣の魔力を吸収する力を警戒しているのか、王宮騎士団たちは魔力を使うことができず、剣で斬りつけるだけだ。


 奮闘しているのは魔道具を使っているアンスロポスか。ただ、気になることが一つある。今倒した魔獣は通常の魔獣と魔力が異なっていた。


 魔力をまとってはいるけれど、この魔力に覚えがある。私は記憶を辿った。師匠の研究室、砕けた粉に含まれていた魔力。


 そうだ! 石化の魔力だ! 他に別の魔力が混ぜ込まれているから気付きにくかったんだ。


 私は飛びかかってきた魔獣を撃つと、氷漬けになった魔獣に駆け寄った。狼型の魔獣の額にはヘイエイと同じで魔石が埋め込まれている。


 感じる魔力は石化の魔力と別の魔力。つまり、石化の魔力で作られた石を使った人工魔石を無理やり狼に埋め込んで作り上げた人工魔獣ということだ。


 酷いことをするな。誰よこんな酷いことをしたのは! って、怒っている場合じゃなかった。


 本物の魔石獣の幼体が生み出した魔獣でないのなら魔力での攻撃が通るかもしれない。弾丸がもったいないし、魔石の力で倒せるならそっちの方がいい。


 私はブレスレットの魔石に触れた。


「アラン様、住民の避難は?」


「ここ周辺の者は済んでいる。何をする気だ?」


「ちょっと試したいことがありまして」


 住民の避難が完了しているなら多少暴れても問題ない。と、思う! 私は炎の魔石がはめ込まれたブレスレットを突き出して魔力を引き出した。


 私の周囲に火の玉がいくつも出現する。


「カレナ?」


 アランの声を背に私は魔獣に向けて火の玉を放った。気付いた魔獣が後方に飛び退り回避する。


 回避した先でアランの部下が魔獣を斬り伏せた。逃げるということは、魔力で出来た火の玉でも恐れているということ。


 獣の本能で火を恐れているのかもしれないけれど、吸収する様子を見せないところからたぶんこの魔獣は魔力を吸収できない。


「アラン様、この魔獣は魔石獣の幼体が放った魔獣ではありません!」


「っ! 魔力を吸収されないということか?」


「はい! 今試してみましたので確実かと」


 背中越しにアランへ告げれば、アランが「分かった」と一言返した。今の話で理解したのかアランからネックレスチェーンの音がする。


 ん? もしかしてネックレスを取り出している? まさか!


「あの~アラン様? もしかしなくてもネックレスを取り出していたりなんかは?」


「そうだが? せっかく君が俺にくれたネックレスだからな。それに氷結系の魔石だからこの魔獣相手に使えるだろ?」


「そ、そうですけど!?」


 魔獣相手に使えると言われてしまえば使うなと言えなくなってしまう。背後からアランの笑う気配を感じる。あーもう!


「じゃあさっさと倒しますよ!」


「ああ」


 短く返したアランが魔石を使ったのだろう。周囲の気温が一気に下がる。氷の矢がいくつか出現したと思えば、次第に数が増えていく。


 アランの闇の魔力の能力の一つ、増殖を使っているのだろう。羨ましい! やっぱりアランの闇の魔力を秘めた魔石はいつか欲しい。


「カレナ、さっきの火をまた出現できるか?」


「え? あ、はい出せますけど」


 一体何をする気なんだろう。疑問に思いながら私はアランに言われた通りに火の玉を出現させた。さっき私が出現させた数と同じ。


 これだと簡単に魔獣に避けられてしまう。短剣の柄に手を掛けていた私の目の前で火の玉が増殖した。


「おぉ! アラン様の力ですね!」


「ああ。同時に放つぞ」


 氷と火を同時に放てばいくつかは接触して水蒸気を発生させる。視界が悪くなるはずだけど。ああ、その水蒸気を凍らせて魔獣の動きを封じるつもりなのか。


「いくぞ、カレナ!」


「はい!」


 アランの声と同時に私は火の玉を魔獣に向けて放った。

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