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第144話 カレナの作ったネックレス

 話題をそらさないと! 私は赤い顔を見られないようにグリアが作ったアクセサリーの台座へと視線を移した。


 そうそう! 今日の目的はアクセサリーの台座を新しく買うんだった。


「グリア、また腕上げた?」


「うへへ~。分かるっすか? さすがカレナっすね! 前にカレナが言っていた実践向きのアクセサリーの種類を増やしてみたんすよ」


 得意げな顔でグリアが両手を腰に当てている。


 アクセサリーはおしゃれで身につける人が多いけれど、騎士団本部で立ち回った時のように激しく動いても邪魔にならないアクセサリーが欲しい。


 それを以前グリアに話していたからさっそく作ってくれたらしい。


「では、これも君が作ったものか?」


 アランが服に隠していたネックレスを取り出した。それはたしか、騎士団本部で模擬戦前日に私が作って渡した氷系の魔石をはめ込んだネックレスだ。


 だけど、そのネックレスは!


「アラン様! ストップ!」


 大声でアランとグリアの前に立って制止したけれど、遅かった。ネックレスを見たグリアが「あ!」と声をあげてアランからネックレスを受け取っていた。


「これカレナがアラン様に渡したんすか?」


「ああ」


 肯定するアランに私は頭を抱える。グリアの手に渡ってしまうとは思わなかった。完全に油断していた!


「カレナ? 具合でも悪いのか?」


「違うっすよ。きっと恥ずかしいんすよね」


「恥ずかしい?」


 心配しているアランが私の背中を擦るけれど、グリアの言う通り私は羞恥心でこの場から立ち去りたくてたまらない。


「グリア」


「だってそのネックレスは」


「グリア」


 私の声を無視してグリアが続ける。


「そのネックレスはカレナが作ったものっすよ。形がちょっといびつっすけど、出来は良かったんす。だけどカレナは納得してなくて絶対に誰にも見せないって言ってたのに」


「ああ~! 聞こえない、聞こえない~!」


 恥ずかしすぎて私は顔を真っ赤にして声を張り上げた。そんな努力も虚しくグリアの暴露はしっかりとアランに届いていた。


「それがこのネックレスか?」


「そうっすよ。かたくなにカレナはそのネックレスは使わないって言ってたのに、アラン様にプレゼントしている時点でだいぶ心が傾いている証拠っすよ」


「グリア~!」


 立ち上がった私は涙目でグリアの口を両手で塞いだ。塞いだところで手遅れなんだけど。


「もが! ほんなほほひっへも(そんなこと言っても)


 もごもごと抗議の声を上げるグリアに私は笑顔で圧をかける。


「そんなことまで言わなくていいのよ、グリア。これじゃあ私がアラン様のこと好きみたいじゃない!」


「違うのか?」


ひはうんふか(違うんすか)?」


 赤面している私の横でアランが首を傾けた。違うとは言いにくい~! 否定しても行動で示してしまっているようなものだから手遅れだし。


 だからと言って素直に認めるのも悔しい。私は苦い顔をして唸った。意識がそれてしまってグリアの口を塞いでいる手の力が緩んだ。


「ぷは! カレナも素直じゃないっすね。こんなカレナが見られる日が来るなんて夢にも思っていなかったっす。アラン様が相手だからっすね」


「俺?」


 アランと同様に私も首を傾けた。アランだからってどういう意味だろう。


「カレナがネックレスを贈るってことは、カレナの魔石好きを目の当たりにしても引かずに受け入れているってことっすから」


 たしかに、アランは幼い頃に出会っていたとはいえ、私の魔石に対する反応を見ても引くことはなかった。


 それどころか、アリスと同じで興味を持ってくれている。だいたいの人は魔石に関して人が変わったようにテンションが上がる私を前にして距離を取りたがる。


 だけど、アランは全部を肯定して受け入れてくれるから私は安心しているんだ。


 アランを盗み見れば、小さく笑っている。途端に鼓動が少し跳ねた。あ~、ダメだ。その顔に私は弱いんだから。話題を変えよう。


「そ、そうだ、グリア。このアクセサリーの台座買うから用意してくれる? それと一つ頼みたいことがあるんだけど……」


 支払いを済ませた私は鼻歌を歌いながらアクセサリーの台座を壊れないように包んでいるグリアに話しかけた。


「なんすか?」


「アルトト村に行って魔道具を作ってほしいんだけ……っ、なに!?」


 突然、店の外から男女の悲鳴と建物が壊れる音が聞こえた。


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