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第136話 アランとの再会、デートの始まり

 ホワイトブロンド色の髪が陽射しを浴びてキラキラと輝いている。まあ、魔石の輝きには負けるけど。


 アリスと同じホワイトブロンド色の髪に整った顔立ちの青年がゆっくりとこちらに向かって歩いてきている。


「アラン様」


 風になびく髪を手で押さえつけながらアランの名前を呼べば、アランは目元を緩めた。


「待たせてしまったか?」


「いえ。私もさきほど着いたばかりですので待っていません」


 そんなに待ってはいない。それよりも私はアランが来てくれたことに安堵していた。本当に来てくれたんだ。昨日王宮で見たばかりだけれど。


 私は視線を少し上に向けた。昨日見たアランは仕事中だったからか、黒色の軍服を着ていた。


 今は腰より少し長めの紺のチュニックを着ていて、腰元をブラウンのベルトでとめている。黒のパンツにブーツをはいているアランは庶民のような恰好をしていた。


 いや、容姿とか立ち姿が整い過ぎて庶民に擬態できてないんだけど。この人庶民的な服装も着こなすのか。


「アラン様はいつもと服装が違うんですね」


「そうか? そう、だな」


 私の指摘にアランは自分の恰好を顧みている。


「カレナとの初めてのデートだからな。せっかく城下町を歩くんだ。目立つ服装は控えようと選んだんだが、変だろうか?」


 照れくさいのかアランは人差し指で頬を掻いた。


「いえ。よく似合っていますよ」


 私は本心を口にした。目立つ服装は控えているけれど、たぶんこの人容姿だけで注目を集めそうだな。私は口にせずニコリと微笑んだ。


 途端にアランが息を呑んで視線をそらした。ん? 急にどうしたんだろう。私は疑問符を浮かべながら首を傾けた。


「あの、アラン様なにか?」


 私の問いにアランが咳払いする。


「いや。その、君の服装が新鮮で……。その服はどうしたんだ?」


 刺繍の入った紺色のブリオーを指すアランが言いたいのは普段着ている服と違うということなのだろう。たしかにウォード家にいる間で着たことはない。


 というか、人生において着たことはない。


「ああ、これですか。レティーシャが選んでくれたんです」


 裾を手で掴んだ私は当然のように答えた。だけど、アランはヘーゼル色の瞳を大きく見開いている。信じられないと言いたげだ。


「レティーシャってあのレティーシャ・マリー伯爵令嬢のことだよな?」


 念押ししてくるアランは私に詰め寄る勢いだ。私は何度か目をしばたたかせて首を傾けた。


「はい、そのレティーシャ・マリーで合ってますよ。昨日友だちになったんです」


「友だち?」


「友だちです」


 アランの問いに私は頷いて昨日王宮でレティーシャから謝罪を受けたあとに友だちになった経緯を簡単に説明した。


 話を聞いているうちにアランが額を押さえ始める。え? なにかまずいことでもあった? それとも急に具合でも悪くなったのだろうか。


「アラン様、具合でも悪いのですか? それなら今日のデートは中……」


「中止は絶対にしない」


 中止の提案を持ちかけた私の言葉をアランがさえぎる。ヘーゼル色の強い瞳に見据えられた私は鼓動が跳ね、瞬時に口を閉ざした。


「君とのデートを楽しみにしていたんだ。絶対に中止はしない」


「そ、そうですか。急に額を押さえていたので頭痛でもしたのかと」


「頭痛は少しな。君がまさかあのレティーシャ嬢までもたぶらかすとは予想外だったからな」


「た、たぶらかす!? そんなことしていないですよ?」


 サリーにも言われたんだけど、なんでみんなたぶらかすって軽率に言うのよ!


「君のことだから無自覚にレティーシャ嬢を救って懐かれたんだろう?」


 否定していた私にアランが苦笑しながら手を伸ばした。ごつごつした指先が私の頬を撫でて困ったように眉を下げている。


「たしかにアフェレーシスはしましたけど……」


「したのか」


「しました。魔石も頂きました」


 素直に頷いた私にアランが吹き出した。肩を揺らして笑っていたアランはひとしきり笑うと、私に手を差し出した。


「まあいい。行こう、カレナ」


「はい」


 私はアランの差し出された手に自分の手を重ねた。

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