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第114話 いざ、王都へ

 アランとのデート前日。私は学校に向かうアリスを見送って朝食を食べ終えると、身支度を整えた。


 服はいつものリマリパテの制服に着替えて、太ももに魔石獣と遭遇してもいいように銃を仕込んで準備完了。


 鞄には銃弾をいくつかと着替えを入れてある。それを持って部屋を出た。


「カレナ様、馬車の準備は整っております」


 階段で待っていたエリナーが私から鞄を預かって玄関まで運んでいく。扉の前にはトムさんやコリン、ルイーズたちが控えていた。


 私の後ろからヘイエイがついてくる。


「はいは~い。ヘイエイちゃんはお留守番ですよ~」


 フンスフンスと鼻を鳴らしながらついて行く気満々のヘイエイの身体を抱き上げたルイーズが緩く笑う。


「あら~? ヘイエイちゃん、首輪が付いてますね~。可愛いです~」


 のんびりした声でルイーズがヘイエイの首輪に気付いた。


 翡翠ひすい色の魔石がキラリと光っていて、コリンが瞳を輝かせながらヘイエイの首輪を見つめた。


「アルトト村から帰宅して作ったんですね」


「あ、やっぱりバレてた?」


「カレナ様以外に作れる人なんていないでしょう?」


 鞄を手にしたまま聡いエリナーが私を見る。作れる時間のことを考えれば、帰宅後こっそり作っていたことは明白。エリナーは呆れたように息をついた。


 馬車に鞄を積んで、出発する前に私は別の鞄から木箱を取り出した。


「カレナ様、いかがしましたか?」


 木箱を手にしたまま振り向いた私にトムさんが問う。他に忘れ物でもあったのだろうか、とコリンたちが玄関へ向かおうとする。


「待って、待って。違うの! ストーップ!」


 動きを止めたコリンたちが私を見る。みんなの視線を集めた私は少し気恥ずかしくなりつつ、木箱を開けた。


「これは?」


 木箱には私の作った魔石がついたネックレスやブレスレットがいくつも入っている。私は得意げな顔をしながらネックレスを手に取った。


「ふっふっふ! これはね、私からウォード家のみんなにプレゼント、かな? プレゼントって言っても手作りだし、凝った物じゃなんだけど」


 言いながら恥ずかしくなってきて私は頬を掻いた。


「これはアリスに渡しておいて」


 アリス用のネックレスは水属性の紺碧色の魔石がはめ込まれている。それをエリナーが大切そうに受け取った。


「確かにお預かりします」


「他はね、これがエリナーで、こっちがトムさん……」


 私はアクセサリー一つ一つ説明して渡していった。この場にいない使用人分はトムさんから渡してもらえることになった。


「私たちのような者にまでプレゼントを用意していただきありがとうございます」


「いつもみんなにはお世話になってるし、たまにはね。それじゃあ、王都に行ってきます!」


 お礼を述べてお辞儀をするトムさんたちに笑みを向けて私は馬車に乗った。いよいよ王都だ。


 馬車に揺られながら私は出発前にエリナーから預かった手紙を開いた。差出人はルーシー・オーウェン。師匠だ。


 一気に嫌な予感がする。開けるのやめようかな。


「いや、師匠のことだから読んでないことも想定して王都に着いた途端にサリーを迎えに寄越しそう」


 読んでいなければ、サリーから小言を言われるに決まってる。私は意を決して手紙を開いた。



 カレナ


 アラン様とのデート前日に王都に来るだろう? 

 王都に着いたら研究所まで来るように


 ルーシー


 シンプル! 師匠ってこういう人だったわ。研究所に来いって何よ! 用件をちゃんと書いておいてよね! 


 というか、なんで師匠にまで私とアランのデートの件知られているのよ! 絶対にサリーからの情報でしょう!? 


 サリーがすまし顔でピースしているのを想像して私は手紙を力いっぱい握りしめた。


 くしゃくしゃになった手紙を握りしめたまま私は鼻を鳴らして窓から流れていく景色を眺めた。

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