2話
今日は7月31日。高2の夏休みも始まり、惰眠をむさぼりながら、のうのうと一人を堪能していた折に、そんなことを言われた。
「俺と住むって、お前家出少女か?見知らぬ中学生を家に上げるのは、社会的にまずいんだ。警察に保護でもしてもらえ。」
「僕は家出少女じゃないし、中学生でもない。死神だって言っているだろう。とにかく上げてくれ、外は暑いんだ。」
夏の真っ盛りなのだからそうだろう。実際汗がぼとぼとと垂れている。
「暑いのならそのローブを脱げよ。」
すると目の前の少女は顔を徐々に赤くしながら、目に涙を浮かべて、
「へ、変態!女の子相手にふつうそんなこと言う?変態、変態!」
そう返された声が大きかったのか、アパートの隣人が出てきた。
「くそ、分かったから部屋に入れ。」
こうして俺は、この不審者を家に招き入れることになってしまった。
部屋の扇風機のスイッチを強にして、少女に向ける。ちなみにローブは脱いでいる。
「あぁ~生き返る~もともと生きてないけど~。」
何を言っているんだろうかと訝しむ視線を向けつつ俺は彼女に問いかける。
「お前が死神だとして、認めたくはないがお前の言うことが真実だとして、なぜ俺が死ななければならない。」
「ん~。なんでだろ?」
んな無責任な。追い出してやろうか。
そんなことを考えつつも、もう一度冷静になる。
「何で知らないんだ。そもそも俺のことはどうやって知った。住所とか完全に情報漏洩だろ。」
「そんなこと言われても困るよ。僕だってこれが初仕事なんだ。ただ管理人さんに情報を渡されてここに来た。」
聞きなれない単語を耳にし、思わず聞き返す。
「カンリニン?」
「そ、管理人さん。僕たち、死神を統制する役職の死神。なんか、現役時代はすごい死神だったらしい。顧客満足度9割越えとか。」
なんだよ、死神の顧客満足度って。
「それでお前はほんとに俺が死ななければならない理由、知らないんだな?」
「だから言ってるじゃん。僕は管理人さんに指示されただけだって。」
依然信用はできないがこのままでは埒が明かないので仕方なく、いやめちゃくちゃ不満はあるがこのことは置いておくことにしよう。
「俺が死ななければならない理由はいったん不問にしてやる。
それで、なんでお前はここにあと一か月すまなければならない。」
俺は第二の質問を投げかけた。
「君は確かに一か月後、死ななければならない、だけど逆にそれまでは死んではならないんだ。
だから一か月後、僕が君を殺すまで僕が君を死から守る。そのために一緒にいてもらう。」
「死から守る?俺はまだ16だぞ?自殺願望もない。」
「君は馬鹿なのか?人間はもろいんだ、心も体も。
今ここにトラックが突っ込んでくるかもしれないし、君が全世界から軽蔑の目を向けられるかもしれない。その状況で君は生きていられる自信があるのか?」
「そんなこと早々起こるわけ……」
「バンッ!!」
俺がすべてを言い終わる前に、玄関から破裂音のようなものが響いた。
「ないだろ……」