一話
この世には、死亡の状況が異常または不詳、あるいは死因が不明または特定できない死、すなわち「不審死」というものが存在する。
しかしある噂によると、不審死を遂げる一か月ほど前になるとあるものが訪ねて来るらしい。
その姿は、おばあさんであったり、さわやかな青年であったり、と様々だが、みな一様にして、黒いローブを羽織り、大きな鎌を持っているそうだ。
その姿が死神を彷彿とさせることから、不審死を遂げることは、死神に魂を刈り取られることだといわれている。
そしてもう一つ、死神に魂を刈り取られると、一つ願い事が叶うらしい。まぁどちらにせよ、根も葉もないただの噂である。
「ピーンポーンッ」
その甲高い機械音は、少し奇妙で、悪寒がする。
夏休みだからといって、心霊番組を見すぎたのだろうか。
まぁそんなことより、俺を訪ねてくるなんて、物好きがいたもんだ。
自他ともに認めるぼっちなおれは、そんなことを考えながら、玄関へと向かった。
「はーい、今開けまーす。」
ドアの先には、見しらぬ少女がいた。
黒いワンピースのようなものにフードがついていて、大鎌のようなおもちゃを持っている。年齢は、14,15くらいだろうか。
「どちら様かは存じ上げないが、その年になって、ハロウィンにお菓子をもらいに来たのか?」
大体、ハロウィンはまだ先だが。
「違う!大体そんな奴いないだろ。僕はれっきとした死神だ。」
「俺は中二病のほうがもっとやばいと思うぞ。」
黒歴史は未然に防いでおいたほうがいいからな。俺と同じ過ちを繰り返させないように。
「だ、か、ら、本物の死神だって!」
うわー。そこまで拗らせちゃってるのか。治療は無理だな。よし、そっとしておこう。
「それで?その死神さんが俺に何の用だよ。」
「僕は君に余命を宣告しに来た。お前はあと31日で死ぬ。」
「ワーソウナンダー。コワイナー」
なんだよ余命宣告って。お菓子が欲しいならもっとましな脅し方があるだろ。
「うぅ。信じてないな。ほんとに死ぬんだぞ。」
「そうか、それじゃ。」
そう言って俺が扉を閉めようとすると、
「何をしてんだ?死ぬまでの残り一か月は、僕と過ごしてもらうよ。」
「は?」