ばかしあい
古くから奥深いお山に住む馴染みの化狐と化狸がある日、どちらがよりうまく人を化かせるかを決めることにした。
「でもどうやって上下を決めるんだ?」
「より高価なものを人から騙し取った方の勝ちさ」
それならばと化狐はすぐに人里へと降りると、切れ長の目を持つ美女へと姿を変えて、そこらに落ちていた汚い布を見事な反物に見せかけた。
そして人混みに紛れさせると声を張り上げる。
「どなたかこの反物を買い取っては頂けませんか」
やがて一人の恰幅の良い、いかにも大店の旦那といった風情の人物が人集りから進み出ると小判を出して反物を買い取った。
化狐は心の中で馬鹿な男だと思いながらその男に何度も頭を下げ、小判を風呂敷に包むと山へと戻っていった。
化狐と別れた化狸は、すぐさま大店の主人といった風情の貫禄のある男性に姿を変じると、そこらに生えていた葉をちぎり小判に見せかけて人里へと赴いた。
そこではなにやら人集りが出来ており、その中心では切れ長の目を持つ美女が見事な反物を買い取ってもらおうと声をあげていた。
人集りから進み出た化狸は用意していた葉を女に渡すと、女は感謝したのか何度も頭を下げて礼を言う。化狸は腹の中で舌を出しながら、惚れ惚れするような見事な反物を風呂敷に包んで山へと戻っていった。
お山で向かい合った馴染みの化狐と化狸は、乾いた笑いをあげながらお互いの腕を称え合った。
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