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『ブレイヴイマジン』イベント キャット・パニック⑥


          *   *   *


 深夜となり、外では昼間眠っていたキャスパリーグが活動を始める頃だったので、俺たちはその日、洞窟内で夜を明かす事にした。敵がまた襲って来ないとも限らない為、無論交替で見張りはした。

 翌日、大分遅い時間帯に起きてから俺たちは外に出、また森に居るキャスパリーグとエンカウントしながらも川まで進み、ボートを漕いで対岸まで戻った。見張りをしていた男性は俺たちが戻り、願い花を見せると歓声を上げ、それから村で病人が次々に回復したという話を興奮気味に語った。

「もしかしてあんたたち、ユナ・モモコネコの親玉を退治してくれたのかい?」

「ええ。ですが、この問題を根本的に解決するには、まだ村の皆さんの協力が欠かせませんよ」ユリアが言った。

「まだ?」

「はい。詳しくは、自警団の皆さんが集まったらお話しします」


 マスクを貰い、村の中に入ると、見張りの男性は広場に自警団の者たちを集合させた。彼らは病床に臥せっているという話だったが、俺たちが昨夜親玉猫の討伐を行った事で、魔法が解けて快癒したらしい。

「……月香の願い花は?」

 俺たちの自己紹介と、既に広まっているらしい旅の目的を告げ終えると、団員の一人がそう尋ねてきた。

「村の薬師さんに届けました。これで恐らく、残りの皆さんも回復するはずです。ですが……こうしてこの一件を収束に向かわせる事が出来たのは、偶然が手伝った事が大きいのです。恐らく皆さんだけでは、伝染病の蔓延は収束不可能なものになっていたでしょう」

 ユリアは答えると、「すみません」と付け加えた。

「皆さんを侮辱する訳ではないのです。でも、恐らく皆さんでは、明月洞に願い花を採りに行く事は叶わなかった。洞窟がユナ・モモコネコの巣になっていた事と、あなた方がその猫たちの侵入を防ぐ為、入口にシャラクを置いていたからです」

 彼女が言うと、自警団の団員たちは揃って()まり悪そうな顔になる。やはり、彼らも自分たちの行いを反省しているようだった。

「明月洞は、親玉猫の巣だった。でも、あなた方が挑んだのは確かに間違った選択ではなかった。洞窟には、あの通り願い花が咲いていましたから。でも、洞窟を人の立ち入りが許されない場所にしてしまったのもまた、あなた方です。洞窟から向こう岸の森に縄張りを張っているユナ・モモコネコ、それらは元々、あなた方のダム工事によって住処を追い出されたものでした」

「それは……確かに」

 団長らしい初老の男性が呟くと、見張り役が「えっ?」と声を上げる。

「ダム工事? 団長、どういう事ですか?」

「実は……」

 団長は、俺たちが下流の村の労働者から聞いたのと同じ話を、全員に向かって話した。まだ明かされていなかった団員たちも居たらしく、彼らは一様に息を呑む。見張り役は、

「そんな事をしなくても、俺たちが渇かないだけの水は手に入るのに」

 と小さく呟いた。

 その通りだ、と、団長は重々しく肯く。「私も含め、村の運営に関わる者たちが欲を出してしまったのだ。それが、このような事態を招いてしまった」

「ユナ・モモコネコたちは、元々明月洞を抜けた先の森に住んでいたんです。それが追い出されて明月洞を通って、こっちに出てきた。そして、元々住んでいた場所を返して欲しくて、この村を襲っていたんですよ。そこを、親玉猫による被害が拡大したあなた方が」

「シャラクで、道を塞いだ。その結果私たちも、願い花を採る事すら出来なくなってしまった……」団長は唸った。「確かに、私たちは過ちを省みようとはしなかった。それこそが、更に大きな過ちだったのだな」

「でも」

 団員の一人が、恐る恐るというように手を挙げた、

「親玉猫は倒したんでしょう? 群れは空中分解になって、もう被害が出る事はなくなったのでは?」

「当分はそうでしょうね。でも、魔物は自然発生する。遅かれ早かれ、きっと第二の親玉猫は現れますよ」

 ユリアは、指をぴんと立てて言った。

「私たち、下流の村の人と話をしたんです。彼らも、ダムの件でこの村を良く思っていないようでした。でも……私たち、皆さんには和解して欲しいんです。それは、この村にまた平穏を取り戻す事にも繋がります」

「ううむ……」

「私たちの旅の目的は、世界の災いを阻止する事です。それには、魔物と共存していく人々の助けも必要なんです。ですから、お願いします」

「俺たちからも、お願いします!」

 俺もイマジンたちも、揃って頭を下げる。

 団長は「分かった」と肯き、村役場らしい建物を振り返った。

「もう一度、村長たちと話し合いましょう。そして、下流の村とも相談する。勇者の方々に、ここまでの事をして頂いたのだ、村のごたごたは、私たち村人の手で始末を着けます」

「皆さん、ありがとうございます!」

 ユリアに倣い、また俺たちもお辞儀をした。団長は慌てたように、しかし微かに微笑しながら、

「お礼を言うべきは、私たちの方ですよ」

 と言った。


          *   *   *


 その日一日は、村で病に苦しんでいた人々が快復していく様子を見届けた。俺たちは村中から賞賛を受け、アロードなどは大変恐縮してしまっていたが、決して悪い気はしなかった。

 ユナ・モモコ症候群は疾患とはいえ魔法の産物なので、一度快癒すれば皆が再び残留する病原体を排菌し、再拡大する事はない。昨日では考えられなかったお祭り騒ぎとなり、俺たちはその様子を見て、また自分たちの旅の意義を実感した。こうして、人々に笑顔を取り戻す事が究極的な目的なのだ、と。

 その間、村では隣村との話し合いなしに行われたダム工事について会議が行われ、俺たちが提案した通り、現在下流の村が行っている作業と共同で撤去を行うという事で結論が出たそうだ。俺たちは一泊した後、下流の村へ向かう一団と共に移動を開始した。

 そして下流の村に到着する頃、昨日俺たちの話したキャスパリーグの件、及びダムの撤去を提言するという話は、あの労働者たちによって既にそこの村人たちにも伝わっていたらしかった。

 俺たちが村を訪れると、入口の門は村人たちの笑顔で溢れていた。

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