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『ブレイヴイマジン』第7章 オープンゲート⑨


          *   *   *


 街の東ゲートでは、『ブレイヴイマジン』のメンバーたちとアーチェスレリアの戦力八百人が、押し寄せるヴェンジャーズ兵たちと激戦を繰り広げていた。俺たちは、隊列を組む衛兵隊の間を抜けて先頭まで躍り出る。

「ケント君! ユリア!」

 リビィが、エムロードハンターを振るいながら駆けて来た。

「奴ら、相当な数よ。でも、まだごく一部みたい」

「俺たちも行くよ! トランスフォーム『アロード・ファイヤー』!」

「トランスフォーム『シルフィ・アクア』!」

「『ルクス・フォトン』!」

 俺たちはブレイヴに変身し、兵士たちに向かって行く。ユリア、ゼドクと視線を交わし、前方の五人程に標的を定める。しかし、その後ろからすぐさま次の一団が出現した。これでは、剣技を使って最初の敵を倒しても、技後硬直中にすぐ次の敵に一斉攻撃を受けてしまう。

「ケント君たち、避けて! フォービデン・ホロロゲイン!」

 彼女が上空から、風の渦で現れた兵士たちを一気に薙ぎ倒してくれる。続いてきた敵は、転倒したヴェンジャーズ兵たちに躓いてよろめきかけた。

「行くよユリア! 覇山焔龍昇ハザンエンリュウショウ!」

「OK! スピニングマリン!」「曙光戴天(ショコウタイテン)!」

 俺たちは、隙を突いて畳み掛ける。敵が倒れると、すぐにまた十人程が少し離れた場所に見えた。スティギオが、横から体を捻りつつ飛び出してくる。

「まだまだ序の口だぜ! 絶雷動嶽衝ゼツライドウガクショウ!」

 彼は現れた重装の兵士を頭から斬り割ったが、その間に兵士たちが彼を取り囲んでおり、技後硬直を狙って技を使った。

「危ないよ、スティギオ!」

 フィアリスが弓矢を放ち、彼を襲う兵士たちの肉壁に突破口を開く。スティギオはそこの隙間から脱出し、過密となって互いにぶつかり合ったヴェンジャーズ兵の群れに雷を落とした。

 ブレイヴたちは、自分たちのペースを掴んでしっかり敵と渡り合えているようだった。問題は、不意討ちの上に物量で押されている衛兵隊の方だ。俺は彼らを見たが、魔法使いの掩護を受けて何とか迫り来る大軍を食い止めている状態で、攻勢に回るのは難しそうだった。

「この街も、最早これまでか……!」

 衛兵の一人に襲い掛かった敵に、火花(スパーク)をぶつけながら一人の魔法使いが呟く。俺はくるりと頭を向け、「諦めないで下さい!」と叫んだ。

「そして、街の中までは敵を入れないように!」

 しかし実際は、既に防衛網を突破し、数人のヴェンジャーズ兵が侵入してしまっていた。だが彼らが破壊活動に乗り出す前に、そういった兵士たちはマティルダやフィアリスが飛び道具で倒してくれているので、事態はまだそこまで深刻な事にはなっていない。

 視線を前方に戻した俺は、次の兵士を迎え撃とうとしてぞっとした。

 何とか人壁の終わりが見えてきたのだが、その奥には更に多いヴェンジャーズの兵団が向かって来るところだったのだ。やはり彼らの目的は、俺たちを疲弊させ、戦力を削ぐ事にあるようだ。

「先遣隊は、まだ居るのね……」ユリアが、厳しい声で言った。

「早く、最初の奴らを何とかしないと」

 俺は目の前に来た兵士をまた一人斬り捨て、次の敵を廻鳶脚(カイエンキャク)で蹴り上げて気絶させた。リビィ、アスタークがさっと動く。

風神戦翼刃(フウシンセンヨクジン)!」

亜空飛貫(アクウヒカン)!」

 彼らが残りを一掃してくれたので、俺は小声でお礼を言う。仲間たちは俺の周りに集まり、後方で侵入した兵士と戦っていた衛兵隊、魔法使い部隊も崩れかかった陣形を整える。

 ──もしここが突破されれば、俺たちの作戦は全部駄目になる。

「次、行こう!」

 仲間たちに叫んだ時には、ヴェンジャーズの第二陣は既にほんの数メートルの距離まで迫って来ていた。


          *   *   *


 幸い、俺たちやアーチェスレリアの戦力の中から犠牲者は出なかった。攻めてきたヴェンジャーズのうち、生き残った兵士たちは戦力差が逆転するや否や投降し、総督府の地下牢へ送還された。

 死者は出なかったとはいえ、俺たちは皆、程度の差こそあれど体の一箇所には必ず何かしらの傷を負っていた。そして敵は、今回攻めてきた何倍もの戦力をまだ保持している。

「今回と同じ作戦は、また採られるだろうね。僕たちがこの程度のダメージで済んだのは、奇跡みたいなものなんだから」

 イヴァルディさんが、難しい顔で言った。

「もう一回同じ事をされたら、今回と同じくらいで済ませられる保証はない」

「時間が経てば経つ程、向こうには同じ事をする準備の時間が生まれる。私たちは、どんどん不利になるわ」

 コーディアも言い、俺たちは顔を突き合わせた。俺は考え、その場で直接傷の手当てをしている衛兵たちを見た。そのリーダーらしい男性に尋ねる。

「皆さん、傷の具合は如何(いかが)ですか?」

「ええ、皆大なり小なり負っていますが、戦えない程ではありません。応急処置ももうすぐ終わります」

「総督府から、作戦が承認されました。このままではヴェンジャーズは、また何度も街を襲撃してきます。速やかに、こちらから仕掛けねばなりません」

「いよいよ最後の戦い、か……」

 衛兵の一人が、しみじみと呟いた。

「ここで生き延びる事が出来れば、俺たちは英雄になるんだ」

「絶対、皆さんの命を無駄にはしませんよ」

 シルフィが、拳を握り締めながら言う。それを合図に、治療を終えていた者たちが皆、「まだやれる」という気迫と共に立ち上がった。

「行きましょう、全員で。この戦いを終わらせ、平和を創る為に。誰もが、エヴァンジェリアに生きていて良かったと思える世界にする為に──この世界に生きる、全ての人の為に」

 俺は言いながら、この世界は自分の第二の故郷、いつか心を馳せる場所になるのだろう、と思った。

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