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般若
「あれ? 喜田君。腕どうしたの?」
赤く腫れている。
「うん…」
と、応えた喜田君は浮かない顔。何かあったのかな? と思った俺に喜田君はこんな事を話し始めた。
「昨日、大変だったんだ。部屋中白い煙が充満して、おとんもおかんも血走った目をしてさ」
「…」
喜田君は物事を大げさに言うことはあまりない。だからその言葉の通りなんだろう。一体何があったんだろう。ぶたれたのかな。え? あの喜田君のおとんとおかんに?
「二人とも『殺してやる』『許すまじ』ってぶつぶつ言いながらうろうろしてて」
「え…?」
おとんとおかん、気が触れたのか? 言うことが物騒過ぎる。これは先生案件かも知れない。
「おかん、急におとんのほっぺたひっぱたいた」
「ええ…?」
「その手に血が付いてて」
「おとん、怪我したの?」
「ううん。それを見た二人は狂喜乱舞」
「…」
「流石に引いたよね。俺が腫れやすいのが悪いのかもしれないけど、あんなに般若になることないのに」
「もしかしてそれ、蚊に刺されたの?」
「うん」