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喜田君ち  作者: 水藍
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瓶の蓋

「この前じーちゃんとばーちゃんちに行ってさ」


 うん。喜田君の言葉に俺は頷いた。放課後の教室はざわざわ煩い。


「おかん方のじーちゃんとばーちゃんなんだけど、おかんが元気なの? 体調変わりない? とか心配しててさ」


「うん」


 そうだよね。うちのじーちゃんとばーちゃんちも元気だけど、体が心配な気持ちは分かる。孫よりも実の子どもの方が大人だし、老いる親を見れば心配に思うよね。と、自分の家のことを思い出しながら同意に頷いた。


「ばーちゃん、『元気よー』って笑ってたんだけど、『そういえば最近力が入らなくなってねぇ…』って落ち込んでて」


「そっか」


「『この瓶の蓋が開かないの』ってジャムの瓶持ってきてさ。じーちゃんもやったけど駄目だったんだって」


 うんうん。固い瓶の蓋とかあるよね。ましてやいくつか知らないけれどご老人じゃ開けられないだろう。


「で、俺とおとんがやってみたんだけど開かなくて」


 ん? 喜田君はともかく、おとんてそんなに高齢じゃないよね? まだばりばりの現役だよね?


「結局、蓋が固いんだねーって事で落ち着いた」


「じゃあ、じーちゃんとばーちゃんちは力入らなくなった訳じゃないの?」


「うん。多分大丈夫だと思う。俺の開けられなかったお菓子の袋ばりばり開けてた」


 そっかー。元気なじーちゃんとばーちゃんだね。


「ジャムはお蔵入り?」


「おかんが挑んだらぱかっと開いた」


 前から思ってたけど喜田君ちのおかん、マウンテンゴリラかなんかなの? でも蓋開いて良かったね。


「そしたら勝ち誇るおかんにおとんが『俺達の力で蓋が緩んでたんだ!』って言って喧嘩になってさ」


 おとんー!? 大人気なさ過ぎるだろ。ここはおかんの親でもあるおじいとおばあの出番だな。


「じーちゃんとばーちゃんも『そうだそうだ!』って参戦してきてさ」


 あれぇー?


「ばーちゃんが、一番長く戦ったのは私! じーちゃんが、いや、そんな事はない。俺だ! で、おとんが、一番力あるの俺だし! って言って、俺を抜かしておかんが、吠えるな負け犬どもめー! って言い合ってて」


 カオス。


「こんな争いが起きるなら、早く大人になって俺が開けたいって思った」


 喜田君。微妙なきっかけで大人の階段上り始めちゃった。

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