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忍者に選ばれてしまった…!  作者: 姫野 紫音
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1.桜美第一学園へようこそ

 初めまして、こんにちは。私、音松 ゆりです!今年から花の高校生になります!私が通う学校は才能の花が開く学園こと、日本でも有名なエリート校、桜美第一学園。


 全国から生徒が集まるような学園で推薦枠がほぼ100%一般受験で入れる人は毎年1~2人ほど。何かしらに特化した天才の少年少女が集まる場所だ。この学園から出た有名人は日本国内にはもちろん海外でも大活躍を果たしている。


 設備や道具は全て調っている上に体調管理や栄養管理をするため専門家が校内にいる。


 俳優やモデルをはじめ、画家やデザイナー、スポーツ選手も多く輩出するこの場所に通いたいと思い夢描く人は数知れない。


 そんな凄い学園に何故私が通えるかというと、推薦状が届いたから。「スポーツ」の部門で。特に中学でスポーツをしていたわけでもない。中学は色々と忙しかったからそんな事してる暇が無かったし。でも、推薦状が届いたんだよね。不思議だわ~。


 まあ、せっかく声をかけて貰ったんだし行くことに決めたんだけど。お金無かったし。推薦枠なら奨学金でるから。それに家からも通える距離だし。寮に入る必要も無くて良い。


「あっ」


 丘の上にポツンと立つ学園が見えてきた。幅広いジャンルの設備が調っているため、膨大な敷地を持つ学園はこの町の丘の上にある。町を見下ろすようにして佇むそれはまさに王のようだ。


 学園までの道はこの桜並木の一本道と学園が運営する鉄道一本しかない。他は木々で覆われた坂を登る事になる。そして私は電車ではなく歩く方を選択した。だって電車って片道100円かかるんだもん。それだったら20分かけて丘を歩いた方が良いに決まってる。


「おーい!ゆりー!遅ーい!」

「美海ちゃん!ごめーん!」


 校門の前で待っていた親友からの声にハッとする。急いで残り少しを走り駆け寄った。


 彼女は村田 美海。私の中学からの親友で、彼女は「アイドル」の部門で声がかかった。茶色のショートカットはふわふわとしていて、瞳は薄い青という神秘的な色をしている。なんでも、彼女のおじいさんはイタリア人だそうでその血を引いたそうだ。身長は私よりも少し低めで可愛らしい。美海ちゃん自身もアイドルを目指して日々自分磨きを頑張っていたので、推薦状が届いたときは涙ながらに喜んでいた。


「もう、待ったよ!早く行こ!」

「ごめんね」


 ぷぅっと頬を膨らませる動作も可愛らしくて、ほのぼのしながらもう一度謝った。すると、「仕方ないなぁ」と呟いて私の手を引き、校舎の中へ進んで行く。そんな姿にも可愛いなぁと思いながら私も歩を進めた。






・・・






「ねぇ、美海ちゃんはどう思う?」

「どうって、デカすぎでしょー!!?」


 だよね……


 入学式が行われる体育館までやって来た私達だが今体育館の大きさに驚き過ぎて、入るのを躊躇っている。周りの新入生もポカンとして体育館を眺める。でも、気持ちは痛いほど分かる。だって、この大きさは凄いもん。私の通っていた中学の体育館3~4個分は入りそう。


「デカいね」


 美海ちゃんは私の言葉を肯定するように何度も首を縦に振った。そんなに激しく振ったら、朝セットした髪型崩れちゃうよ!?


 ハッとしたように我に返れば、ささっと髪を整える美海ちゃん。流石そこはしっかりしてる。それにしても外観も綺麗だ。どうやってあんなに上の方まで掃除してるんだろ。もしかして、自然が…?いや、あれは人の手だうな。うん。


 他の新入生に続いて私達も勇気を出して体育館に足を踏み入れた。


「新入生ですね?3年の高田と申します。お名前宜しいですか?」


 体育館に入ると受付があり、そこで高田先輩に対応してもらう。胸元には生徒会というバッジが光っている。


「音松 ゆりです」

「村田 美海です」


 先輩は手に持っていたボードから名前を探し、ペンでチェックすると、顔を上げて口を開いた。


「では、音松さんは2階の一番手前側。村田さんは、1階の一番左側の列に並んで下さい」


 美海ちゃんと別れちゃうんだ。きっと部門ごとに別れて座るんだろう。そうかもとは思っていたけど、親友と離れるとなると心細い。それを思っているのは私だけじゃないようで、美海ちゃんも不安げに瞳を揺らしていた。


「…後でね、美海ちゃん」

「……うん」


 別れを惜しみながらも2階への階段を一歩一歩上っていく。不安もあるけれどやっぱりワクワクもある。そして、2階へやって来て高田先輩に言われた一番手前の「スポーツ特化クラス」という札の列を見つけた。もう大分揃っているようだ。


 そこに見知った顔を見つける。


「りんちゃん!」


 私の声にピクッと反応したりんちゃんこと、小森 林檎ちゃんはゆっくりと後ろを振り返った。目が合うと驚いたように目を見開いて、立ち上がり近づいてきた。


「ゆりちゃん!」


 小学校からの付き合いだけど中学では3年間とも違うクラスになってしまっていた。彼女は陸上の短距離で何度も賞を取っている。学校の横断幕には毎年のように名前が掲示されていた。


「知らない人ばっかりで不安だったんだ。ゆりちゃんいてくれて良かったぁ」

「私も。さっきまで美海ちゃんと居たんだけど、クラスが違うから離れちゃって」

「美海って、村田 美海?あの超絶可愛い?」


 そっか。りんちゃんは美海ちゃん大好きだったよね。美海ちゃんはネットで動画を上げてるんだけど、りんちゃんがそれを授業中に見て怒られたって話は中学では有名だったね。大好きだけど、自分が近寄るのが恐れ多いなんて理由で遠目からしか見てなかったけど。


 りんちゃんの質問に頷けば目をキラキラいやギラギラとさせて、質問攻めにあった。好きな本から嫌いなタイプまで。そんな細かいこと知らないのに…。


 そんなに好きなら、仲良くなれば良いのに。いや、好きだから近づけないのか。なんかその気持ち痛いほど分かる。






・・・






「こんにちは。私は「スポーツ特化クラス」担当の橋本 美恵子よ。今日から宜しく」

『宜しくお願いします!』


 入学式を終え、私達は教室にやって来た。入学式は特に何もなく、校長の話を聞いたり、呼名をしたり…。あっ、テレビが入ってるのは驚いたけど。呼名は生徒数が多いからすっごく長かったけど、名前を呼ばれるたびに何処かしらで耳にしたことがある凄い人ばっかりで聞いていて楽しかった。


 でも、周りが有名人だらけだから、逆に私は浮いてたかも。何のスポーツの大会にも出てないし、もちろん賞もない。特にこのクラス「スポーツ特化クラス」はテレビでも見たことがあるような人が多くいる。


 そして、現在教室に上がってきた訳だが、こりゃまたびっくり。教室が大きい。机や椅子もピカピカで高そう。これって学生の使って良いものなのか不思議だ。周りの人の反応を見てみるとそれぞれで私のように驚く人もいる。けど、この待遇は当たり前というように自分の席にドカッと腰掛ける人もいた。


 体育館の時から思ってたけど、何もかもが常識から外れてる…!


 私達が全員座ったのを見計らって喋り出したのが教卓に立つ、橋本先生。キリッとしたショートヘアの先生でモデルのようにスタイルが良く、スーツをビシッと着こなしている。なんか、仕事出来ますって感じ。


 クラスメイトは全員で30人程。少ないし、直ぐに仲良くなれそう。3年間同じクラスだし。てか、本当に無名の私がここに居て良いのかな…!?何だか不安になってきた。


「自己紹介から始めましょうか。そうね…今日は4月4日だから合わせて8ね。じゃあ…」


 ……………………………。嫌な予感がする。私、8番なんですけど。


「8×3で24番の増田君から」


 ずこーっ!!何で3をかけたんだ!?私が当たるかと思った!


 先生の無茶振りを受けた増田と呼ばれた男の子も驚いたようで「何で3かけたんすか!?」と抗議?している。


「私が好きな数字が3だからよ」


 真面目に答える先生に教室がシン……。と静まる。なんかイメージと少しズレてる。増田君も諦めたのか頭をガシガシとかくと、その場に立ち上がった。


「増田 琉斗。バスケ専門。中1から3年間はアメリカ行ってた。宜しく」


 ぶっきらぼうに告げるとドカッとまた椅子に腰掛けた。教室内からはパチパチと拍手が起こる。


 そこからは出席番号の通りに次々と自己紹介が進められていく。やっぱりというか何というか凄い人が集まってるんだな。テニスやアーチェリー、乗馬にサッカー。でも、クラス内がこんなにバラバラの種目で良いのかな。まぁ、そこは学園の意図なのかも知れないけど。皆、専門のスポーツ分野があるとはいえ、もとのスペックが高いんだろうから。


 いよいよ順番が回ってきて席を立つ。


「音松 ゆりです。好きなものは、プリンとお金。好きな言葉は『自由奔放』です。宜しくお願いします」


 終わりとばかりに座ると次の人が自己紹介を始める。私の後ろ2人の自己紹介が終わった後、一際目立つ顔立ちの男の子が自己紹介を始めた。


「白川 陸翔りくとです。専門は空手だけど、ボクシングや柔道も得意です。宜しく」


 意外かも、結構細マッチョって感じだからそんな武術系だとは思わなかった。顔も整っていて芸能人みたい。クラスの女子も白川君に興味深々だ。テレビでは見たことない…と思う。たぶん。


 そしてまた数人の自己紹介が終わり、残り数人と言うところでもう一人目立つ人が立った。


「野澤 芽衣です!専門はバトミントンです!仲良くしてもらえると嬉しいです。宜しくお願いします!」


 ペコッとお辞儀するとふわっとしたポニーテールにまとめられた髪が揺れた。可愛い。「アイドル」部門にも呼ばれそうな程可愛い。彼女は以前テレビで見たことがある。優しくて周りから愛されるバトミントン界のお姫様と紹介されていた。


 残り数人の自己紹介も終わると10分の休憩に入った。当然というか何というか、やっぱりほとんどの人が初対面なわけだ。それでもスポーツ選手ってコミュ力高いってよく言われるけど積極的に話しかけている。色々なピンチや緊張を乗り越えてきてこそ付く力だとは思うけど。


 てか、野澤さんと白川君、人気だな。机周りに人が集まってる。そりゃテレビ出てて有名人だもんね、皆。


 うん。私はジッとしとく。りんちゃんと目が合うと手は振ったけど、それだけだった。そういえば、自己紹介の時、私だけが専門のスポーツについて何も言わなかったな。でも、基本何でも好きだし得意だから…。


「は~い。休憩終わりね!席に着いて。委員会決めましょ」

『はーい!』


 先生の合図にぞろぞろと座っていく。正直、委員会は入る気ないね。やってくれる人には申し訳ないけどさ。そんなことを考えながらHRを受けた。

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