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オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
最終章!僕らのギャルゲーソングを紡ぐ物語が終わらない!ミニコンサート準備編
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第百二十九話「追突によるひらめきと金本必勝法!」

曲のボーカルパートを聴き、僕はその歌い方を頭に叩き込む。


 女性の声はキーが高く、僕ではなかなか声を出すのはむずかしい。これが、大きな問題であった。


「すこし、キーを下げてみるか」


 パソコンの音楽編集ソフトを使い、ボーカルのキーを下げてみる。いくつか下げて、僕の声質に合うキーを見つけていく。


「さすがにキーは下げなきゃですよね。岩崎先輩がメインで歌う場合って、そのキーに馬場先輩たちが合わせるんですか?」


「んー! そうだねー! まあ、それは前からやってきたことだしー。そこまで苦ではないかなー?」


「けど、それって逆にすごくないですか?」


 僕がパソコンで作業をしていると、その横で瑠奈が響子にそんなことを尋ねている。


 原曲のキーが響子たちには一番合うだろうけれど、そこを下げても違和感なく歌いこなせているのは響子のすごみであろう。


 芹沢さんはコーラスもうまくできるようになって、ボーカルとしても大きく成長をしていた。


 今回のミニコンサート。そして、金本に聴かせる曲は僕がメインボーカルとして演奏をする方向で進んでいる。


 それでも僕だけでなく、響子たちだってそれなりに歌のパ―トが難しいはずである。ここは、僕が彼女たちを引っ張っていくものだろう。


 そのためにも、ベストな音程のキーを決めなければならない。


 ――ううん……とは考えても、どの低いキーもなにかしっくりこない。


 実際に歌声のキーを下げて聴いているのだか、僕の出せる音域で良い感じなものがない。


 いや、あるにはあるのだけれど曲のイメージが変になってしまう。その点を踏まえたり、響子たちのことを考えるとコレでいこうといものがないということだ。


「さて、どうしたものだか……」


 金本へ聴かせる歌も大事だが、ミニコンサートでやる歌のキーだけはここで決めておきたい。それだけでも決まれば、響子たちが歌の練習を始めやすいしそれに合わせて瑠偉たちもそれに対応できる。


「それじゃあ、とりあえずマイクの準備だけはしておこうかな。わたし、マイクを取ってくるね」


「ありがとー、芹ちゃん! たしか、マイクはそこのコンセントで充電をしているからー、引っこ抜けばすぐに使えるよー」


「うん、わかった。ちょっと待ってて……って、きゃああ!」


 響子にそう言われて芹沢さんがマイクを取ろうと席を立って動いた時。足をつまずいたのか。僕が座っているところで盛大に転ぶ。


 その倒れた際に僕の背に当たり、その衝撃で僕の顔が思いっきりパソコンの画面にぶつかった。


 顔がぶつかった衝撃でボーカルのピッチをいじっていた数値がおかしなところで止まる。そこでなぜか、押してもいない再生ボタンがクリックされて音がパソコンのスピーカーから鳴っていく。


「いてて……って、うん?」


 僕はぶつかったところを手で触っていると、そのボーカルの声になにか不思議なものを感じた。それは僕の直感だ。


「どうしたのー? キョウちゃん。顔をぶつけて、顔も悪くなって頭も悪くなっちゃったー?」


「顔も頭も元々悪い! それより、これを聴け!」


 いつもの響子が茶化すが、僕はそれよりもこの変更されたピッチのボーカル音源を聴かせるために音量を大きくする。


 僕からそう言われた響子はキョトンとしてスピーカーの音を聴く。僕らのやりとりを見ていた芹沢さんたちも同じように耳を傾けた。


 イントロのボーカルはそこまでではない。けれど、次のボーカルが歌うサビに僕らは衝撃を受けた。


 声のキーがはるかに高いのだが、それが違った歌のような印象。しかも、原曲を壊すことなくイメージは残っている。


 僕は無意識のうちにその歌を口ずさんだ。


 普段、会話をするような声のトーンであるがメロディを口ずさむも息の苦しさはない。もしろ、それがどこか味があるように聴こえる。


「おおー! 意外に悪くないんじゃん! そのキーなら、いけそうな気がするー」


「たしかに。ベースやギターも、そこまでキーを変えなくても工夫をすれば弾けそうですよ?」


「そうか……よし、これでオケを作ってみよう! 歌のメロディと歌詞はすぐに覚えるよ」


 これならばもしかすると、すごいカバーになるのではないかと思えてくる。


 僕がそう口にすると、楽器組はすぐにそれぞれアレンジを考えるべく動き始めた。一人残る芹沢さんに、僕はお礼を言う。


「ありがとう、芹沢さん。キミのおかげで、ミニコンサートでやる曲のアレンジがひらめきそうだよ」


「うん……けど、それよりもごめんね岩崎君。頭は大丈夫?」


「かっ、顔ね? 大丈夫! ぶつかったおかげで、頭はすっきりしたけれど」


「ごめんなさいぃぃ! わたしも、ギターの練習をがんばるね」


 そう言って芹沢さんはギターを持ちながら、瑠偉たちのいるところへ去っていった。僕も自分のやるべきことにとりかかろうと席に戻る。


 ――ん? このキーがいいならば、もしかすると金本の課題曲もそうじゃないか?


 僕はそう考えると、曲のデータを変えて課題曲のボーカルを編集ソフトでキーを変えてみる。


 しかし、キーを変えて歌うことを金本は認めるだろうか。


 僕の声質は理解をしているはずだが、あの男のことだ。なにかしら難癖をつけてくるかもしれない。


 などと一瞬考えるも、ミニコンサートでやる曲と同じ数値に変更をして聴いた後、その考えは吹き飛んだ。


「これは……すごいな。これなら、金本先輩を納得させることができるかもしれない」


 そのボーカルの音声を聴いてそう口にする。それだけの自信があるほど、この数値でのボーカルのキーはすごい。


「金本への必勝法もある! いける……いけるぞ!」


 僕はそうさけぶと、さっそくこちらの歌も完璧にするために練習を再開する。


 そして、数日後。


 金本の課題曲を披露する時がやってきた。

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