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オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
最終章!僕らのギャルゲーソングを紡ぐ物語が終わらない!ミニコンサート準備編
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第百二十四話「僕らは忖度すべきか……思いのままゆくべきか?」

 ジャスティンさんからの連絡は、しばらく経っても来ない。


 ミニコンサートの代行をやる話で、僕らはどういった曲をやるかを話し合う。部室にあるマジックボードには、みんなの意見がかかれている。


「ここはやはり、ジャスティンさんの会社から出ているギャルゲーソングをやるってことが、セオリーじゃないですかね」


「けどー、あそこはバンドで弾いている曲はあまりないんだよねー! どちらかといえば、テクノっぽい曲調が多いのよねー」


「あー。言われればそうでしたね! あまり、聞いたことのないギャルゲーばかりだったような」


 話はやる曲をジャスティンさんの会社から発売されているギャルゲーの中から選ぶか。もしくは、いつものように僕らが気に入った曲をやるかだ。


 たしかに、会社の主催でやるのだからジャスティンさんのギャルゲーメーカーから曲を選んでやるのがいいだろう。


 しかしハマる曲じゃない場合、バンドとしてのモチベーションは下がる。相手はギャルゲーソングを聴きつくした猛者だろうし、やるからには全力を出し切りたい。


 そのためには、全員がこれだという曲を演奏するのが一番。


「どうせやるなら、新しい曲もやりたいですよね。やったことのない曲なら、俺たちの実力もわかるし、どれくらいの評価をもらえるか知ることもできますし」


「ああ、そうだよなあ」


 瑠偉はそう新曲をやるのもありだと口にする。たしかに、新しい曲をやるのもいいアイデアである。


 それぞれが意見を言い合うも、なかなか話は進まない。


 ――ガサゴソ。


 僕はみんなが話している中、僕はおもむろに自分のギターケースからギターを取り出す。


 ――ジャララーン。


 ギターの弦を押さえて、適当なコードを弾く。


 しばらく部室では弾いていなかったので、指がどうにもぎこちない。それだけギターに触れていない日々を過ごしていたことを思いふけた。


「やっぱり、僕らはギャルゲーソングを弾いていかないとな」


 どんな曲やるにしても、みんなと一緒になにかを演奏したいし、それを聴かせてたくさんの人へ知らしめたい。それが、この音楽研究同好会でやるべきことだ。


 僕がそう口にすると、みんなも同じ気持ちだったのか大きくうなずきながら僕のギターの音色を聴いている。


 ミニコンサートでどんなライブをやれるのだろうと、まだ決まってもいないのに不思議と高揚感がある。


 そして、みんなも楽器を出して僕のギターに合わせようとした時、勢いよく部室の扉が開いた。


「岩崎君! 聞いたぞい! ミニコンサートという重大なイベントに出るらしいじゃないか!」


「……金本先輩」


 いったいどこから聞いて知ったのかわからないが、金本がやたら興奮をしながら部室へと入ってそう口にする。


 せっかく、少し部活の青春らしい雰囲気が出ていたのに現れる金本。けれどその勢いに僕は苦笑いを浮かべ、これまでの経緯を話す。


「ということでして、ジャスティンさん次第ではあるんですが……重大イベントとして挑もうかと」


「ほう! それはまさにビッグなプロジェクトではないか! まあ、岩崎君でイベントなど起こせるはずもないし、頼るは正義の人であるな! はっはっはー!」


 金本は高笑いをしながら僕にそう話すが、わざとではないにしろどうにも腹が立つ。けれど、彼の言う通りそれが実現すればビックなプロジェクトでなるのも事実である。


「まあ……そんなこんなでジャスティンさんの連絡を待ちつつ、どんな曲をやろうかと」


「ふむふむ。どれ、この金本様が査定をしてやろうではないか」



 そんなことを口にしながら、金本はマジックボードに書かれている他のギャルゲーソングの曲名やアーティスト。そして、ジャスティンさんの会社から出ているギャルゲーの主題歌を歌った歴代の歌手の名前をじっくりと見つめて考え込んでいる。


 数多のギャルゲーやその曲を知り尽くす金本は、これらを見てどう判断するのだろうか。


「けどさー! やっぱり、自分たちでやりたいギャルゲーソングのほうがよくなーい? パパとか気にしなくていいじゃーん」


「今回はギャルゲーメーカーが主催をするミニコンサートだぞ? そこで他社の曲を歌うのも、変な話じゃないか」


「下手すると、なにか揉め事に発展しそうで怖いですね……」


「だろう? だから、そこが難しいところなんだよなあ。忖度をするか、自分たちがハマる曲をやるべきか……」


 そこでまた先ほどと同じような話し合いに戻ってしまう。今回ばかりは、いつもより難航しそうである。


 けれど、金本が話に割って入ってくれそうだし、彼の意見を参考にするのもいいかもしれない。そんなことを考えながら、金本がどう言うかを待つ。


「きええええい! ジャスティン氏から出ているギャルゲーを歌うアーティストの曲をやる必要はなーい!」


「「ええ……?」」


 いきなりさけんだ金本がマジックボードの書かれている文字を勢いよく消す。その奇行に僕らは思わず声をもらす。


「このボーカルが歌うからこそ、曲が輝くのだ! 岩崎君が歌ったらイメージが崩れてしまう! それは、たとえギャルゲーソングを広めるためとはいえ……許せなーい!」


「めっ、めずらしく金本先輩が曲をカバーするなって言っているの……なにげに初じゃないか? 僕が歌うことにNGってのが、少しイラっとくるが」


「まあ、熱烈なファンの人にありがちな発言ですかね……よくいますよ? 絶対に本人以外は許さないって人」


「金ちゃんがあのアーティストのことをそこまで好きなのってー、意外かもー」


 たしかにギャルゲーソングだけに限らず、好きなアーティストが歌う曲を素人が歌ってみた的なことをすると、攻撃的になる人もいるだろう。


 まさか身近にいたとは思わなかったが、そう金本に言われてしまうということはミニコンサートを観に来るであろう観客もそういった類だろうか。


「おいおい……いきなりハードルが上がってしまったじゃないか」


 ここにおいて、ミニコンサートで歌う予定であったアーティストの楽曲を禁止されるとは思いもしなかった。ジャスティンさんではなく、金本である。


 金本の顔からものすごい圧を感じる。これはもう選択肢はないだろう。


 ――ピピピピピピ!


 何も言わせない雰囲気の中、僕のスマホが鳴る。


「はい。あっ、ジャスティンさん?」


 電話に出ると、通話の相手はジャスティンさんであった。


「ハーイ! 岩崎ボーイ! ナウ、会社の緊急会議が終わったのデース」


「はっ、はあ……ということは、ミニコンサートをどうなるかって話ですよね」


 ジャスティンさんの話の内容から、ミニコンサートに関することが話し合われていたようだった。僕はスマホを置き、スピーカーモードに切り替えた。


 つまり、僕らが代わりに出れるかどうか。演奏をする曲を決める以前に、ものすごく重要なことである。


 僕らはゴクリと息をのむ。そして、ジャスティンさんからの返答を待った。


「フフフ。岩崎ボーイ? さてはナーバスになっていますネ? コングラチュレーション! ユーたちがミニコンサートの代役としてライブができることが決まったのデース!」


 その大きい声がスピーカーから聞こえると、みんなは歓声を上げて喜んだ。


「きえええええい! 重大イベントが当確したぞおおおおおお!」


「いや……金本先輩が一番にそれを言うのはおかしいですから。それになんですか、当確って」


「まあまあ、岩崎君。そこは許してあげましょう?」


 そう芹沢さんに諭され、僕はうなずく。けれど、ミニコンサートに出ることが本当に決まったのはうれしい。それと同時に、もう後には引けないことを自覚していく。


「そこで、ユーたちが歌う曲なんデスガ……」


 ジャスティンさんはそう口にするが、どうにも申し訳ないような声のトーンで話す。そして、次に出た言葉に僕らというより、金本が誰よりも奇声を上げていたのだった。

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