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オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
最終章!僕らのギャルゲーソングを紡ぐ物語が終わらない!ミニコンサート準備編
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第百十八話「次なる目標を見出すには?」

 先ほどまでワイワイと盛り上がっていた僕らの打ち上げは、お通夜のような沈んだ空気になっている。その原因となる人物が、なぜか僕らと同じ席に座って打ち上げに参加をしているからだ。


「あのう……なにゆえ、イベントの優勝者である滝沢様がこのファミレスに?」


 重たい沈黙の中、そう尋ねたのは金本であった。


 気まずい僕らに変わってなのかはわからないが、この雰囲気を変えたいからなのか。


 作り笑いをしながらも顔を引きつっている金本の問いに、滝沢エマが答える。


「せっかく優勝をしたから、お祝いにおいしいものを食べようと思ってね。ほら、参加したのあたし一人でしょう? 気楽に行けるのってファミレスくらいかなあって」


 僕らと違い、明るいトーンで彼女はそう答えた。思い出したが滝沢エマの性格はまったく悪くなく、むしろ社交的で誰からも好かれるタイプ。


 その人当たりの良さを感じとった金本は彼女の言葉に、デレデレとした顔をしている。


 けれどそんな金本とは違い、僕らはどうにも気まずい。


 本人がいないところでギャルゲーソングを検索しているとか、いろいろしゃべっていただけに僕は冷や汗をかいていた。


「けど……まあ、君のいうことは本当のことかもしれないね」


「……え?」


 ジュースを一口飲みながら、滝沢エマがぼそっとそう口にする。


「ライブではあたしが勝ったけど、君らのバンドと差なんてなかったよ。ギャルゲーソングってすごいなって思った」


「はっ、はあ……」


 思いもしない彼女の言葉に、僕はそう声をもらす。


 少なくとも滝沢エマにギャルゲーソングの良さをより知ってもらえたことと、僕らとライブの差がないと言ってくれたことにおどろきと嬉しさがある。


 バンドマンとして、対戦相手からそう言われるのはとても名誉なことだろう。


「おおおおおお! つまり、滝沢氏もギャルゲーに興味があるということですかなあああ? ならば、この金本めにおまかせくだされ」


「ちょっと、金本先輩」


 僕らの話の間に割って入ってくる金本は、興奮気味にそう滝沢エマに話しかける。ギャルゲーに興味を持った相手ならば、誰にでも積極的な金本はさらに暴走をするかもしれない。


 僕はすぐにでも止めに入ろうとすると、滝沢エマは答えた。


「それって、他にもいろんな曲があるってこと? なら、あたしがやった曲に似ているようなものもある?」


「おっ、おふう」


 まさかの返しに金本はテンションが上がっている。


 ギャルゲー自体ではなく、自分のやるジャンルと同じような曲があるかどうか気になっている様子だ。


 だが、金本はそんなことはお構いなく、滝沢エマにそれらしい曲をギャルゲーを交えつつ熱弁をし始めた。


「まあ……いいか。結果的にギャルゲーソングに関心があることみたいだし」


「はははは。そうだね」


 金本たちを見ながら、僕と芹沢さんはその様子を見つめる。


 すでに最初にあった微妙な雰囲気はなく、みんなはワイワイとにぎわいを取り戻していく。


 滝沢エマを交えても違和感はなく、みんなと打ち解けているようにも思えてきた。


 それからも話題はイベントの出来事や、ライブのこと。食事をしながらと、バンドマンの打ち上げらしいものとなる。


「そういえば、君らって次のライブとかは考えているの?」


 しばらくして、滝沢エマが僕にそう尋ねてくる。


「え? いや、イベントも終わったばかりだしなあ。まだ、次がどうとかは考えていないかな」


「そうなの? せっかくいいライブができるのにもったいないよ」


「そう言う滝沢さんは?」


「んー。とりあえずイベントの優勝者ってことで、なんか全国大会的なライブイベントに出ることになった」


「ああ、たしか司会者の人が最後に言ってたなあ」


 このイベントで優勝した高校生は、全国の軽音楽部で日本一を決めるようなさらにビッグなイベントに出るという話を司会者の人が話していたのを思い出す。


 僕らが出られていたら、ギャルゲーソングをさらに広めるチャンスでもあっただろうが、それはかなわない。仕方のないことである。


「出るからには……もちろんまた優勝をしてくださいね!」


 僕はそれに参加をできないことを少しくやしながら、滝沢エマにエールを送る。


「どうだろうねー! 全国にはさらにすごいバンドが山ほどいるからねえ。けど、やるからには全力で挑むのがバンドマンよ」


「そうですね!」


 一人のバンドマンとして、彼女の言葉がとても理解できる。それと同時に、僕らもギャルゲーソングをもっと認知させるためにできることをしようと思い始める。


「次かー。うーん、どうしようかなあ」


「きええええい! 岩崎よ、そこを代われーい! 滝沢氏とは、まだ話が終わってないのだぞおおおおお!」


「はははは! 君って、おもしろいねえ」


 強引に僕の座る場所を奪いにくる金本に、滝沢エマは大笑いをする。


 けれど、僕は次にやるべきことをどうするかで頭がいっぱいだ。


 それぞれが次のライブに向けて、前進をし始めている。けれど、ギャルゲーソングをやる僕らはどう活動していけばいいのだろうか。


 みんなが話に盛り上がっている中、僕は一人で次への活動を考えるのであった。

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