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オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
激闘!ライブバトルに参加して、勝ち上がれ!トーナメント大会編。
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第百十三話「僕らのライブが始まる!ギャルゲーソングを知らしめろ!」

 ステージには、まだ滝沢エマが演奏をした後の熱気が残っているように思えた。


 ギターを構えマイクスタンドの前に立つ僕は、そう思いつつ曲を弾き始めようとしている。


 僕だけでなく、響子や瑠偉たち。そして、芹沢さんも同じような思いでステージに立っているだろう。


 今からやるのは、決勝でやるために準備をしていきた曲ではない。本来、このライブでやる予定であった曲はギャルゲーソングの中では最もバンドらしく、曲調もテレビで流れているような有名なアーティストがやるものに劣ってはいない。


 滝沢エマに対抗できる曲のひとつであった。けれど、僕はあえてその曲で勝負に出ない選択をした。


 ――ここはやるはずだった曲じゃなく、僕らの力を最大に出せる曲をやろう。


 ライブが始まる前に、僕がそうみんなに話した。いきなりの変更に、みんなはとまどいながらおどろく。


 けれどみんなは不安や緊張はなく、僕の提案を受け入れてくれた。


 そして、今から僕らにとって最高のギャルゲーソングをライブで披露する。僕らがバンドを組んで初めてライブをやった曲を。


 ――ギュワワァァン!


 僕はギターの弦をはじき、思いっきり鳴らす。これまでにないくらい感情を込めたギターの音色だ。そのギターに合わせるように、みんなの奏でる音も重なっていく。


 これまでいろんなところでこの曲を弾いた来たけれど、その中でダントツの始まりだ。曲のイントロがこれまでよりさらに迫力を生み、演奏の質が上がったものである。


 ところどころ聴いたことのないアレンジをはさんでくるが、それも曲の良さを際立たせていった。


 そんな原曲にないアレンジをされたイントロから曲は始まる。そのイントロに、観客はいきなりおどろかされただろう。


 聴いたことのない曲であり、なおかつ耳に残るイントロ。盛り上がらないはずはない。まるでオリジナルの楽曲を初めて聴いた時に感じた衝撃を観客も受けている。


 そう思えるように、観客席側から歓声がすぐに聞こえてくる。


 ――出だしはオーケー。このまま、曲のAメロに繋げるぞ。


 僕はギターを弾きながら手ごたえを感じ、みんなに視線を送る。他のみんなも、うなずきながら演奏を続ける。


 ギャルゲーソングなのを忘れるくらいの、曲調に変わったがそれがきちんとギャルゲーソングだとわかるのは、これから歌う歌の歌詞だろう。


 ここは響子のリードボーカル。そして僕のハモリとコーラスがメインとなるのだが、とてもラヴリーな感じの歌詞を歌う。


 それはギャルゲーソングでしか表現できないような甘い歌詞だが、それがよきところでもある。


 聴く人によってはそれが不快に感じるのが、今のギャルゲーソングが受け入れられない理由の一つだろう。いかにも、オタクが好きそうな言葉ばかりだから。


 けれど、それを僕らなりにアレンジをして良さを最大限に表現をする。それをこのライブでも、証明できる。


 僕と響子が一緒に歌っていく。それは今までと変わらない。けれど、僕らの歌が曲に乗って会場に響くと、今までとは違ったような雰囲気を感じた。


 同じ曲をやっているのに、まったく違う人が歌っているように思ってしまう。それでもギャルゲーソングにもかかわらず、会場を沸かすことができている。


 僕は最初から無敵感を感じて、感情のまま歌いギターをかき鳴らす。


 ――ジャララーン! ジャカジャカ!


 ギターのひずんだ音が曲のかっこよさを協調させる。そこに、芹沢さんもギターを同じように弾く。


 瑠偉や瑠奈も、自分の出す音に絶対の自信があるかのように積極的に音で表現している。


 僕らにしかできないギャルゲーソングの演奏。これは、他のバンドでも出せる絶対的なパフォーマンス。


 やはり、僕らはギャルゲーソングだからここまですごいライブができるのだ。


 観客はライブで演奏しているギャルゲーソングに、盛り上がっている姿がステージから見える。


 バンドと観客が一体感を生んでいた。それこそが、ライブというものである。少なくとも、僕らの弾くギャルゲーソングが受け入れられている証拠。


 大型イベントなだけあって、ライブハウスや野外コンサートと似たような光景に僕のテンションは上がっていく。


 僕は歌のハモリをさらに強調させるべく、マイクに向かって声のボリュームを上げようとした時に、そこへ芹沢さんがマイクに近づいているのに気がつく。


 ステージに設置されているのは、マイクスタンドが三本。それは予定していた曲に合わせたものであった。


 しかし、本番で曲を変更したから芹沢さんのマイクスタンドは不要。なぜなら、この曲で芹沢さんはギターのみ担当であるからだ。


 けれど自分が歌ってきた感覚なのか、芹沢さんは無意識にマイクスタンドに近づいる。


 その様子を見逃さなかったのは僕だけでなく響子も同じだ。僕と響子は互いにアイコンタクトをして、なにかを決めたようにうなずき合う。


 響子は歌いながらマイクスタンドからマイクを抜いて、そのまま持ちながら歌い続ける。そして、芹沢さんがいるほうへ歩く。


 その間も歌っているのだが、一瞬響子は芹沢さんの顔に近づいてなにかを言っているように見える。


 なにかアクシデントか機材のトラブルかと思った観客が、少しだけざわめく。


 けれど、次の瞬間。歓声はさらに大きくなる。


 芹沢さんはマイクに唇を近づけた後、口を開いて曲のリードボーカルを歌い出した。


 僕と響子による歌のパートに、芹沢さんが加わる。


 それは、いままで試したことのないものであり突発的なもの。けれど、それが新たなムーブメントを起こす。

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