プロローグ
とある城の広間にて、二人の男が対峙している。
「クルシュよ。聖剣は手に入りそうか。」
その声に反応し、目の前で頭を下げていた男が顔をあげる。
「はっ。もう間もなく聖剣は別世界より、私の片割れが持ってまいります。」
「そうか。占い師からも、もう間もなく魔族側にも封印されていた魔剣が解き放たれると言われた。もし、魔族が先に魔剣を開放してしまうと、我々人種族に対抗する術がない。なるべく早く頼むぞ。」
男がクルシュに向かって、頭を下げる。
「賢王様、頭をあげてください。必ず、聖剣をこの手にし、我々の代で魔族との決着をつけ、平和な世の中にすることをお約束します。その為に我々勇者がいるのですから。」
賢王ジルバード五世は頭を上げ、優しく微笑む。
「やはり、儂はお主をこのジルムード賢国の知の勇者に任命してよかったと心から思っておる。頼りにしておるぞ。」
クルシュは王の言葉に思わず胸が熱くなる。
「もったいなきお言葉。ただの平民であった私の才能を見出してくださった賢王様には感謝しかございません。それでは引き続き、聖剣を手にする為に準備を進めてまいります。」
「うむ。頼んだぞ。では、下がってよい。」
「はっ」
クルシュは賢王に一礼し、その場を後にした。
退出していくクルシュの後ろ姿を目で追っていたジルバード五世は、その姿が見えなくなる寸前に、なぜか言いようのない不安に駆られた。