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草案  作者: 禄星命
第1章
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─第7話 天災─

宿に戻ったとほぼ同時に、雨が降り始めた。それは次第に強さを増し、ひと息つく頃には激しい雷雨となっていた。

「すごい雨ね...。流石に市場のお店は畳んでるでしょうね」

「そうだね。早めに行動しておいて正解だった」

縄で吊り下げた野菜や果物を眺める。ランプに照らされる姿は、まるで洒落たカーテンのようだ。

「どれくらいで雨止むのかなあ」

ベッドに横たわりながら、リベラはぽつりと呟く。

「そうね、長くて三日だと思うわ。早ければ、明日には天気は良くなるかもしれないけど...」

こればっかりは天の神様次第ねと、ヴィオラは困ったように笑った。

「焦っていてもしょうがないさ。落ち着くまで、船旅で疲れた心身を休めるとしよう」



──────────



一縷の望みを抱いて迎えた翌朝も、空からは滝のような雨が絶えず降り注いでいた。

「暇だわ...」

「絵本もないし、お散歩もできないもんね...」

いただきます。と、三人は店主から貰った橙色の果実を一口食べる。身体は温まったが、気分は晴れないままだ。

「そうね、出来ることといえば恋バナくらいだわ...」

「こいばなって?」

首を傾げるリベラを見て、ヴィオラは微笑ましそうに話す。

「お泊まりした女子にありがちな、恋愛トークのことよ。“○○くんのことが好き〜”とか、“告白したけど振られちゃった〜”とか。そういう、甘酸っぱくてほろ苦いお話をするの」

「そうなんだ...。お姉さんもそういうお話するの?」

「うーん、アタシは専ら聞き手だったわ。仲良くしてた女の子たちが、アタシに相談しによく家に来てたの」

懐かしいわ、とヴィオラは遠くを見つめる。

「お姉さんは、好きな人っていたの?」

「ぶふっ!?」

リベラの質問に、ヴィオラは紅茶を吹き出し勢いよく噎せた。

「なるほど、それは興味深いね。恋慕とは一体どういうものなんだい?私にも教えてくれないかな」

「ちょっ、サフィラスちゃんまで───」

「気になるよね」

「うん」

二人は揃って無垢な目を向ける。

「...あ、アタシ急用を思い出したからちょっと席を外すわ!」

それだけ言うと、ヴィオラは逃げるようにどこかへ行ってしまった。

「行っちゃった...」

「申し訳ないことをしてしまったかな。頃合いを見て謝りに───」

「た、大変よ!外が!」

言いかけた矢先、息を荒くして戻ってきた。そのただならぬ様子に、リベラは不安げな表情を見せる。

「どうしたんだい?」

「村が、水没しかけてるわ...!」

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