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草案  作者: 禄星命
第5章
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─第14話 演者と芝居─

「サフィラス、ヴィオラ!おかえり!」

「ただいま」

「リベラちゃーん!会いたかったわー!」

サフィラスが軽く返答をする一方、ヴィオラは駆け寄りリベラに抱きつく。

「わっ、手冷たい」

「あらっ!御免なさい、アタシったら───」

「これ、良かったら使って?」

咄嗟に離れるヴィオラに差し出されたのは、黒色の手袋だった。手首の辺りには紫色の刺繍が施されており、所々に手作りならではの味が醸し出されている。

「リベラちゃんが編んだの?」

「うん!ヴィオラに似合うような色を選んだよ。大きめに作ったから、サイズも多分大丈夫」

「なんてこと···!アタシ、感動のあまり泣きそうだわ···!」

隅々まで眺めて堪能した後、ヴィオラはいそいそと手に着ける。

「どう?似合ってる?」

「そうだね。服と色合いのバランスもとれていて素敵だよ」

サフィラスが肯定すると、ヴィオラの表情は一層輝いた。

「ですって!大切にするわ、本当に有難う!」

「どういたしまして!···あのね、これ···サフィラスの分も編んだの」

するとリベラは躊躇いながら、テーブルの上からマフラーを手に取り、サフィラスに差し出す。

「···一番最初に編んだから、なかなか上手くいかなくて。でもチルアに教えてもらいながら、頑張って───」

弱々しく話すリベラから紺碧の作品を持ち上げると、サフィラスは自身の首に巻いて微笑む。

「うん、温かい。···きっと、リベラの真心が込められているからだろうね」

「···っ」

しかしリベラは顔を背けてしまい、サフィラスは首を傾げる。

「どうかしたのかい?」

「う、ううん。何でもないよ。···それより、フレイアとアルディは?」

「二人は私とヴィオラとは別の仕事を任されていてね。それが思いの外厳しかったらしく、今は寝室で休んでいるよ」

「そうなんだ···」

寂しげに眉を下げるリベラに、ヴィオラは朗らかに笑う。

「大丈夫よ、別に大怪我したーとかじゃないから!少ししたら、二人の方から顔を見せてくれるわよ」

「···うん」

明らかに落ち込んでいるリベラに、ヴィオラは一層明るく話題を持ち掛ける。

「そうそう!アタシ、お留守番してた時のお話とか聞きたいわ〜?チルアちゃんとした女子トークとか!」

リベラは暫し考え込む仕草を見せると、軈て思い出した記憶を零す。

「うーんと···チルアとヴァイドのデートのお話とか?」

「えっ、何それものすごく気になる!」

ヴィオラが食い気味に反応すると、リベラの表情も次第ににこやかになる。

「話しても良いか聞いて来てもいい?」

「アタシもついてくわ!」

ヴィオラはサフィラスに目配せをすると、リベラの後を追って部屋から出ていった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


───これは、ヴァイドとサフィラスが、二人だけの空間で対面していた時のこと。

『···何故、俺がお前らにやたらと干渉するのかだと?』

『今更だけれど、真意を問いたくてね。どうして二人に利点が無いのにも関わらず、食事や寝室の提供をしてくれるのか。いくら先程の依頼があったとはいえ、まるで見返りがないのでは?』

『···そうだな』

『過干渉とも思える言動は、今まで出逢ってきた仲間を除く、誰よりも多くて。そして、誰よりも親身だった。···まるで何かの罪滅ぼしをしているようにすら、感じられる』

『···』

『だから、別れる前に聞いておきたいんだ。貴方の本心を』

サフィラスの問い掛けにヴァイドは暫しの沈黙を置き、その重い口を開く。

『···昔の話になる。俺とチルアは、国の研究者だった』

『なっ───』

『···そう、“人体実験”だ。内容は、お前の想像通りのソレで間違いない。···ここまで聞けば解るだろ?俺は···俺とチルアは、被験者のお前に贖罪がしたかった。無論、今後もお前の手助けは行う。何せまだ、碌な償いも出来ていないからな』

『───何故最初に言わなかったんだ!』

『···激昂するのが目に見えていたからだ。あの場には“無関係”な人間が多く居たからな。暴走し、術を唱えた場合のリスク回避だとでも言えば、お前も納得するだろ』

『っ···』

『負傷し帰還したあの二人。···言葉にはしていないが、瞳に恐怖の色があった。···余程術の脅威にさらされてきたんだろうな。“あれ”と同等···いや、凌駕するオリジナルのお前が正気を失ったらどうなるか。今でこそ話せるが───』

『もういいよ。ところで、あの鉱山に“彼”が現れるのも計算済みだったのかい?』

『いや、予想外だった。···そもそも、生きていた事すら知らなかった。俺とチルアは、最後まで見届ける事なく離れたからな。···お前もそうなんだろ?』

『···思い出したくもないよ』

『···そうか。それなら最後に一つ、お前に確認しておきたい事がある』

『何だい?』

『───まだ“芝居”は必要か?』

『···そうだね』

サフィラスは乾いた笑いを浮かべた。

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