─第6話 揺らぎ─
アルディとフレイアを鉱山に残し、三人は村の中心地まで引き返す。
「あの二人、放置しちゃって大丈夫かしら?」
ヴィオラは来た道を振り返る。それに対してサフィラスは、“何とかなると思うよ”と返答する。
「⋯いがみ合いは、当人同士が本心でぶつかり合って解決するしかないからな。今回が良い切っ掛けになるだろう。⋯事態が好転するかはそいつら次第だがな」
「それって───」
「さて。お前らが遂行すべき内容についてだが⋯」
ヴィオラの声を遮り、ヴァイドは二人に紙を突き付ける。
「俺の素材調達に付き合ってもらう」
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一方留守番中のリベラとチルアは、暖炉の前で仲良く編み物を楽しんでいた。
「そうそう、右手の針に糸を絡ませて、そのまま左手の針に⋯」
「こ、こう?」
「はい!バッチリなのです!若い子は飲み込みが早くて教え甲斐がありますねぇ」
「えへへ⋯」
照れ笑いをしながら、リベラはひと編みひと編み針を動かす。
「ちなみに、そのマフラーは何方かへの贈り物なのです?」
「えっ、と⋯」
リベラは手を止め、躊躇いながら言葉を漏らす。
「お世話になった人に。受け取ってくれるか分からないけど⋯ありがとうの気持ちは言葉だけじゃなく、形にもしたくて」
「大丈夫!これだけ真心がこもったマフラーなのです。きっと、その方も喜んで受け取ってくれますよ」
チルアは慈愛に満ちた表情を浮かべる。その微笑みに一瞬、母親の姿が重なった。
「⋯ママ」
「どうかしたのです?」
「⋯ううん、なんでもない」
霞む視界を振り払うように、リベラは首を振る。
「───リベラちゃん」
チルアは椅子から立ち上がると、彼女を横から優しく抱擁する。
「無理しなくていいのです。辛い時は泣いて、楽しい時は笑顔になって。自分の気持ちを抑え込まなくていいのですよ。⋯私はリベラちゃんのお母さんではありませんが、本当のお母さんと同じくらい、甘えてくれていいのですよ」
リベラの顔をそっとハンカチで拭い、変わらず微笑みを向けるチルア。その母性に、彼女は堪らず嗚咽を漏らした。
「よしよし。今までずっと、大人しかいない中でよく堪えてきましたね。ご褒美に晩御飯は、リベラちゃんの好きな物を何でも作ってあげるのです」
「うっ⋯ひっく」
「いっぱい泣いて落ち着いたら、またお話しましょう?リベラちゃんに聞きたいこと、沢山あるのです!」
リベラが頷くと、チルアは満面の笑みで少女の頭を撫でた。




