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草案  作者: 禄星命
第4章
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─第3話 覚悟と信頼─

「───という仕組みなのです!この技術は、私たち夫婦の専売特許なのです!」

「なるほど、陽の光を蓄積する鉱物を砕いて表面に塗布する...。なかなか興味深いね」

サフィラス達は買い物を終えた後、流れるように夫婦のもてなしを受けていた。テーブルの上には妻チルアが焼いたお菓子と、夫ヴァイドの淹れた人数分の温かい果実茶が並んでいる。

「石はどこで見つけたんだ?」

「それは企業秘密なのでーす」

「む。武具に応用し、戦術を増やせればと思ったのだが...」

真面目な顔をしながら焼き菓子を頬張るアルディに、チルアはクスクスと笑う。一方、ヴィオラは苦笑しながら言葉を漏らす。

「相変わらず脳筋ねぇ。そんなんだからモテないのよ」

「それとこれとは関係ないだろ、うっ!げほっ!」

「あら、大丈夫?落ち着いたらお茶でも飲んで、口を整えなさいな」

噎せ返るアルディに、ヴィオラは自身のカップを差し出す。アルディは三度ほど咳き込むと、その全てを飲み干しようやく安堵の表情を見せた。

「ところで。二人は何故人里離れた森の中、単独で店を営んでいるんだい?」

「それは───」

「...鉱物がこの辺りでしか採れない。ただそれだけの事だ。...俺らの事情を探るより、お前は自分の心配した方がいい」

ヴァイドはサフィラスを指差す。

「...その帽子。普通の人間には気付かれないだろうが、俺らみたいな“勘の冴える人間”にはまるで意味がない。瞳も髪も、これまでに何度か晒してきたんじゃないか?」

耳の先端は隠れている。腰まで伸びた長い髪も、緩く編み込んで服の下に仕舞っている。目元だって、帽子を目深に被っている。───とはいえ、“変装”というにはあまりに簡易で。サフィラスは、投げかけられた至極真っ当な問いに答える。

「そうだね。行く先々で見られているよ」

「...甘い。あまりにも楽観的すぎる」

「どういう意味だい?」

口調を強めるヴァイドにより、和気藹々としていた空気が張り詰める。

「...近頃、頻繁に耳にする単語が幾つかある。例を三つ挙げるならば、“異形”、“魂”、“宝石”。これらが何を意味するか解るか?」

「なっ───、誰かがサフィラスちゃんのこと言いふらしてるってこと!?」

「さあな。...確実に言えることは、日を追う事に耳にする頻度が増している。この先、その易い変装ではまず無理だろうな」

「うん。けれど、私はこの手法を変えるつもりはないよ」

脅しとも取れる言葉。だが、サフィラスは顔色ひとつ変えずに淡々と答えた。

「何故だ?」

「“自身の手で終わらせたい”からさ」

「...だがそれは、お前の身勝手ではないのか?」

ヴァイドは一層語気を強める。

「かもしれないね。事実、ここに来るまでに幾度となく仲間を巻き込んだ。辛い目に遭わせ、涙を流させてしまったこともあった。それでも───」

帽子を手に取り、彼を見据える。

「皆、共に旅をしてくれる。だから、このままでいいんだ」

「俺はこの紅髪を引っ捕らえたら国に帰るがな」

「しつこい男は嫌われますよ」

「がっ...!」

フレイアの鋭い指摘にアルディは堪らず胸を押える。

「ホントよねぇ。だけど、アタシも鬱陶しいって言われるくらい付き纏うタイプなの。二人は驚くかもしれないけどアタシ、3ヶ月はサフィラスちゃんと一緒にいるのよ!」

立ち上がって腕を組み、誇らしげな表情を見せるヴィオラ。それに対抗するかのように、リベラも声を上げる。

「わ、私も!ずっと一緒にいるよ!」

「ええ。誰よりも傍にいたのは、リベラちゃんよ!」

その言葉と周囲の頷きに、少女は顔を赤らめる。一部始終を見聞した後に、ヴァイドは僅かに口角を上げた。

「...ふっ、杞憂だったか」

「いや、忠告は有り難く受け取っておくよ。ひとりでは、ここまで来ることは難しかっただろうから」

ヴァイドは「そうか」と一言だけ言い、再びドアの向こうに姿を消した。

「仲良きことは美しきかな、なのです!さあさあ、お茶もお菓子もまだまだたっぷりあります!時間も忘れていっぱいお喋りしてくださいねー!」

満面の笑みを浮かべるチルアの手には、彩り豊かな生菓子が。そして彼らは手料理を食べながら夜が耽けるまで話し込み、その日を終えた。

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