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草案  作者: 禄星命
第3章
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─第10話 本心と和解─

「ニ、ニーエ!───全部聞いていたざんす!?」

『...うん』

驚愕する王の眼前に現れた、2つの謎の霧。その先には、下を向いてつま先でくるくると円を描く少女の姿が映し出されていた。一方、坊主は腕を組み仁王立ちをしている。

「貴方達も?」

『はい。壁を壊されたときから、僕らは全てを見聞きしていました』

「そうなのねぇ。...ふふっ、幻滅したでしょう?」

『そんなことは───』

「いいのよぉ。表情を見ればわかるわぁ」

坊主は王からとっさに視線を逸らす。ダリアは僅かに眉を下げたが、胸に手をあて胸中を吐露し始めた。

「聞いてたと思うけど、あらためて言わせて頂戴。...本当にごめんなさい。十年もの間、貴方達をここに縛り続けてきたこと。私の願望のために、貴方達を利用してきたこと。...本当に、本当にごめんなさい」

するとクローザもしずしずと霧に近付き、霧の向こうの民全員と目を合わせる。

「───ボクちんも、お前達に心から謝らせてほしいざんす。...自分勝手なことをして、悪かったざんす」

そして2人は肩を並べ、深く頭を下げた。

『おうさま...』

「この際だから、何でも言ってくれて構わないざんす。ニーエ、それと───」

『セイズです』

「セイズ達にも。ボクちんとダリアに、審判を下してほしいざんすよ。投獄でも折檻でも、どんな罰でも受けるざんす!だから───」

『まずは僕らの話を聞いてください!』

「ひっ!?」

『黙って聞いていれば、自分達のことばかり!ニーエさん達や、僕らの気持ちを聞くんじゃなかったんですか!?こちらの言葉に耳を傾ける前に、謝罪や贖罪だの!結局は、“僕らの本心を聞くのが怖い”んじゃないんですか!?』

「ひぃぃ!」

青筋を立てて迫り来る坊主に、クローザは堪らず後ずさりをする。

『...すみません、いい歳して取り乱してしまいました。では、今度はこちらが話す番です。まずはニーエさん達から。王様に何か言いたい事はありますか?』

少女らは顔を見合わせ、しばらく沈黙する。やがてひとり、またひとりと言葉を漏らし始めた。

『う〜ん、よくわかんないけど...。おうさまがいなくなっちゃうのはいやだな〜』

『おいしいものをいっぱいくれたり、かわいいおはなをくれたりしたの』

『ねられないとき、えほんをよんでくれたの』

『だからね、いたいこととかしたくないの。ずっといっしょがいいな』

その場にいたニーエ全員が、各々声を出す。そして少女達が静まると、坊主は頷いた。

『次は僕らの番ですね。───率直に言うと、僕らは貴女が嫌いでした』

ダリアは唇を噛みながらも、彼らの言葉に耳を傾ける。

『清貧禁欲を信条とさせながら、毎晩相手を強いる。抵抗すれば、身体に鞭を打たれる。外界との接触すら許されない。僕らにできることといえば、鍛錬のみ。そんな理不尽な日々を、十年もの間繰り返させられましたから』

すっかり小さくなってしまった王の姿。片や、淡々としていた坊主の声色は、次第に穏やかになっていった。

『...けれど、僕らは知っていました。貴女が何かに苦悩し、けれどそれを誰に零すこともなく、日夜立ち向かっていたことを。先程のやりとりを聞いて、合点がいきました。...全て、“跡継ぎのため”だったんですね』

「...ええ」

『たしかに、王家の血を絶やすまいという姿勢は、王として至極真っ当な思考です。けれど、それは“倫理に背いてまで繋がなければならないもの”なのですか?』

「そ、れは───」

言い淀むダリアに、すっと手が差し伸べられる。ひとつ、ふたつ。大小様々な手のひらが、2人の王に向かって伸びていった。

『...何が正解なのか、どうすべきなのかを、一緒に考えませんか』

『わたしたちもてつだうよ!』

「ありがとう...!」

2人の王は、民を抱き締めた。

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