─第9話 エゴ・メモリア─
二人の王は、事の経緯を語る。世継ぎに恵まれないせいで諍いを起こし、オウとトツに国を分けて統治をしていたこと。そして、続けざまに各々の愚行を吐露する。
オウの主クローザは、若さを保つために、ニーエ達の血液を定期的に摂取していたことを。トツの主ダリアは、坊主達から精液を採取し、ホムンクルスを生み出そうとしていたことを。
最後に二人は“世継ぎができないがために、彼/彼女達には酷いことをしてしまった。せめてもの償いとして、王位から下りこの国を去りたい”と言い口を閉じた。
「───なんと身勝手な!散々民を玩弄し、挙句の果てに遁走だと!?そんなことが赦されるわけないだろう!」
「彼奴の言う通りだ。貴様らが本当に償いをしたいのであれば、まず被害者である民と向き合うべきだろう。処遇は貴様らが決めるべきことではない」
フレイアとアルディの厳しい言葉に、二人の王は身を縮ませる。
「...貴方達がその贖いを望むのならば、私が助力することも可能だよ」
そこに、サフィラスは一つの提案を投げかけた。その柔らかい声に、ダリアとクローザは頭を上げ次の言葉を待つ。
「民と言葉を交わすことに抵抗があるのならば。過去を捨て、新たなる地で人生を紡ぎたいのならば。私が術をもって“改竄”してあげるよ」
「そんな魔法みたいなことができるざんす!?」
それは好都合だ、とクローザは小躍りする。
「容易いことさ。オウの民もトツの民も、みな等しく“王がいた記憶”が無くなる。───そうだ、ついでだから“他国から拐かされた”という記憶も消してあげよう。民達は、“共和国に生まれ落ちた生命”として、偽りの記憶をもってその生を謳歌するのさ。命尽きるその日まで、ね」
「...」
ぴたり、とクローザの動きが止まる。ダリアも、先ほどとは異なり覇気がない。
「うん?そっか、二人の記憶も弄っておいた方がいいかい?死ぬまで罪の意識に囚われるのは辛いだろう。貴方達の行った非道の全ても、“紛い物の思い出”に書き換えて───」
「───ざんす」
「ん?」
「嫌、ざんす...!ニーエ達と過ごした時間を、なかったことには、っ、したくないざんす...!」
「...私もよぉ。あの子達に忘れられるのは、...蔑まれるより、よっぽど堪えるわぁ...!」
涙声で二人の王は言葉を吐き出す。手を顔にあて、溢れる想いをとめどなく流し懇願するさまは、幼子のように儚く脆く映った。
「それなら、貴方達はどうしたいんだい?」
「決まってる、ざんす。...ぐすっ。ニーエ達に、全てを告白して、陳謝するざんす!」
「...うぅっ。たとえ赦されないとしても、自分が犯した罪だもの。...暴言だろうと、投石だろうと、全部受け止めるわぁ」
「───と、いう訳だけれど。“キミ達”の率直な意見を求めたい」
サフィラスは、虚空へと手を伸ばす。すると、そこにニーエと坊主達の姿が映し出された。目を白黒させる二人に、サフィラスは種明かしをする。
「今までの会話、全部彼らに筒抜けだったんだよね」




