─第5話 夜伽の始まり─
螺旋階段をかけ上った先に、真紅の扉があった。描かれた蔦には色とりどりの宝石が散りばめられ、ドアノブには薔薇の模様が刻まれている。
「はあ、はあ...。本当に、この先に王様はいるのかしら」
「人の気配はある。...入ってみるしかなさそうだ」
扉に耳をあて、アルディは声を潜めながら言う。
「───よし、開けるよ。覚悟はいいかい?」
頷く二人を確認すると、サフィラスはドアノブを回す。するとそこには、ガウンに身を包んだ長髪の人物がソファに寝そべっていた。
「...あらぁ?アナタ達が“今日の相手”かしらぁ?」
「そうだね。けれど、その前にこちらからも質問させてほしい。貴女が王かい?」
「そうよぉ」
女は豊満な胸元をはだけさせ、裸足のまま歩み寄ってくる。
「う〜ん、一度に三人相手するのは初めてだわぁ。誰からにしようかしらん」
そして舌なめずりをすると、サフィラス達を品定めし始めた。
「逞しい殿方も素敵だし、女性的な殿方も新鮮味があっていいわぁ。けれど...。そうねぇ、最初は貴方がいいわぁ。一番“搾取”し甲斐がありそう...」
ピッ、と女に指を向けられた人物。それは、サフィラスだった。
「───いいとも」
「っ、サフィラスちゃん!」
「単独は危険だ!」
「大丈夫。私に任せて」
二人が制止する中、サフィラスは顔色一つ変えず女へと歩み寄る。
「アナタ達はぁ、終わるまでそこで待っててねん」
サフィラスに腕を絡ませると、女はそのままベッドへと向かう。
「───っ、我々は一旦ここを離れよう」
「そうね...」
酒気にあてられたような顔色のアルディとともに、ヴィオラは来た道を引き返していった。
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「ふふ...。ねぇ、フードを外して?顔をよく見せてちょうだい?」
サフィラスをベッドにゆっくりと押し倒すと、女は彼の顔を隠す布を取る。
「あらぁ?貴方、その顔と耳───」
「そう。私は普通の人間ではないんだ」
女は目を丸くしたが、すぐに恍惚の表情へと変わる。
「素敵...。こんなに綺麗な瞳も髪も、初めて見たわぁ...」
髪に触れ、耳を撫で、そして頬を手でなぞる。
「透き通るような白い肌...。良いわぁ、今夜は眠れないくらい燃え上がれそう...」
「王よ。行為をする前に、こんな“飲み物”はどうだい?」
サフィラスは懐から赤い液体の入った小瓶を取り出す。
「これって...?」
「そう。ちょっとした“魔法の薬”さ。味は保証するよ」
暫し黙考した末、女は悪戯っぽく笑う。そして、中身を飲み干した。
「ふふ、とっても上品な味ねぇ」
「では、始めるとしようか」
サフィラスは自身の服に手をかけた。




