表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
草案  作者: 禄星命
第3章
23/49

─第3話 ニーエ─

一方その頃、リベラとフレイアは教会で少女達に囲まれていた。

「どこからきたの?」

「なまえは?」

香しい花を身に着けた少女達は、興味津々に二人の顔を覗く。

「えっと、私はリベラ。遠い国から来たの」

「フレイアと言います。ラランジから来ました」

かがみ込んで、フレイアは少女一人ひとりに目を合わせ微笑む。

「“わたしたち”はニーエ。よろしくね!」

「うん!」

「...?“私達”、とはどういうことでしょう」

手を取り合う少女達の言葉が引っかかったフレイアは、傍にいる少女に尋ねる。

「そのままのいみだよ。わたしも、あのこも。みんな“ニーエ”ってなまえなの」

「───」

両手を大きく広げ、背伸びをする少女。その一点の曇りもない瞳に、思わずフレイアは口をつむぐ。

「...どうしました?リベラさん」

ふと視線を逸らすと、顔色の悪いリベラの姿があった。

「ううん、なんでも、ない...」

明らかな作り笑みを浮かべるリベラは、お腹を押さえていた。フレイアは次いで声をかけようとしたが、少女達に妨げられてしまう。

「そうだ、だいじなことききわすれてた!」

「リベラ、フレイア、このくににはどうしてきたの?」

「この国の王様に会いに来たの」

リベラが答えると、少女達が目を輝かせて飛び跳ねる。

「そうなんだ!じゃあ、わたしたちがあんないしてあげるね!」

「助かります」

すると、一人の少女がどこからともなくやって来て、純白の衣類を手渡してきた。

「そのまえに、このふくをきないといけないの。おおきさはあってるかな?」

二人は広げて確認する。それは、仕立てられたばかりのような輝きを放つワンピースだった。

「はい。私は」

「うん、私も平気だよ」

「よかった!じゃあ、きがえたらおしえて!」

少女達が離れた後、板で作られた即席の更衣室でリベラとフレイアは着替え始める。

『この衣類は、ここのしきたりなのでしょうか...。何事もなければいいのですが』

フレイアはワンピースに袖を通しながら、一人眉をひそめた。



──────────



教会の裏口にある階段を降りていったその先には、可憐な少女達とは真逆の、狂気そのものがあった。

「これ、は───」

壁に打ち付けられた手枷、傍に落ちている黒く細長い布。瓶に詰められた蠢く何か。鞭のようなもの。少女が五人横になってもなお余るであろう大きさのベッドが、部屋の片隅に無造作に置かれていた。

「なに、これ...」

「リベラさん、今すぐここから離れましょう」

震えるリベラの手を取り、フレイアは駆け出そうとする。しかし、リベラは首を横に振った。

「ううん、それは出来ない」

「ですが───」

「そうだよ、フレイア。この“ぎしき”をのりこえないと、おうさまにあうことはできないんだよ」

「っ...」

これから何がここで起きるのか。想像もしたくない。けれど、王に会わなければ目的は達成できない。少女達に危害を加える訳にも行かない。どうすれば、どうしたらこの窮地を───。

「えっとね、ふたりにききたいことがあるんだ!」

フレイアの思考を妨げるように、少女は質問を投げかける。

「リベラとフレイアは、もう“紅月”はきた?」

「紅月...?」

険しい表情となったフレイアの一方で、リベラは首を傾げる。次の瞬間、荒い息をしながらリベラが膝をついた。

「リベラさん、しっかり!」

「お腹、痛いの...。ギュッてする感じで、立ってられない」

近くにあった手すりを力強く握り、しゃがみこむリベラ。その表情は、教会にいた時よりも更に悪化していた。そして、最悪のタイミングで“それ”は訪れる。

「あ───」

ぽた、ぽたり。リベラの脚をつたって、紅い雫が垂れた。

「ふふっ、よかった。ちょうどいいタイミングできてくれたね」

ニーエ達はニッコリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ