─第2話 献上品候補─
仄暗い通路を抜けた先には、むさくるしい光景が広がっていた。岩をロープで引き摺りながら歩く男。目隠しをしてぶら下がる丸太を蹴りあげる男。取っ組み合いをしている男達。
「すごい光景ね...。色んな意味で...」
四方八方、どこを見ても筋肉隆々の男達が映る。そして、空気もどことなく雄々しいにおいがしている。門番の坊主の言う通り、そこには女性の姿は一人たりともなかった。
「おや、久方ぶりの来訪者ですか。ようこそクーロンへ。何か分からないことがあれば、何でも聞いてください」
すると、若い坊主が声を掛けてきた。サフィラスは早速王の居場所を尋ねる。
「この国の王は何処にいるのか教えてくれないかい?」
「ほほう、王への謁見ですか」
その言葉を聞くと、何故か坊主は三人をまじまじと見つめた。全身くまなく目を動かし、ふむふむと頷く。
「いいでしょう。ついてきて下さい」
「思ったよりあっさりいける感じかしら?」
「...どうだろうな」
前向きなヴィオラの一方で、アルディは疑いの目を坊主に向けていた。
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案内されたのは、妖しげな雰囲気を醸し出す部屋だった。見たことのない棒状のものや、透明な液体の入った瓶が無造作にテーブルの上に転がっている。
そして、一人で寝るには大きすぎるベッドが一台、部屋の中央に位置していた。艶やかなピンク色の天蓋が、その異質さを際立たせている。
「ちょっと、これ───」
辛うじて人が認識できる部屋の中、ヴィオラはなんとも言えない表情で固まっていた。
「貴様、ここに我々を連れてきた目的は何だ?」
低い声で問うアルディに対し、坊主は淡々と答えた。
「貴方達は、王のもとへ向かうのでしょう?ですから、相応しいかどうか事前に確かめておこうと思ったのです」
首を傾げるサフィラス。一方で断言しない坊主に、アルディは静かに言葉を突き付ける。
「...それがどうしてここに繋がるんだ?」
「察しが悪いのか、あえて聞いているのか分かりませんが...。では、答える前にこちらからも質問させてください。貴方達は“白月”はもう迎えましたか?」
その言葉に、ヴィオラとアルディの表情が険しいものへと変わる。
「だとしたら...。それが王とどう関係するのかしら?」
「返答ありがとうございます。では、お答えしましょう」
坊主はニッコリと微笑みながら三人と面と向かい、こう言い放った。
「王の“夜伽の相手”として相応しいかどうか、この目で確かめさせていただきます」




