─第1話 オウとトツ─
岩山を居住とした、修行僧の生きる国クーロン。彼らを縛る厳しい戒律は、来訪者にも問答無用で適用するという。その事を王妃から聞かされた五人は、一抹の不安を覚えながらも門へと辿り着くのであった。
「...来訪者よ。この国に何用か」
「王に会いに来たんだ」
早速サフィラスは、王妃から貰った手紙を屈強な坊主に手渡す。開封し中身を確認した坊主は頷いた。
「この印、エレウスのものか。...よかろう、入国を許可する」
「ありがとう」
「だが、五人で行動することは許されない」
いざ門をくぐろうとしたが、坊主に止められる。すかさずヴィオラは疑問の声を上げた。
「どういうこと?」
「クーロンでは、男女は寝食含む全ての行動を共にすることはできない。よって、女は“オウの門”、男は“トツの門”それぞれ別の門から入国することとなる」
「その間、一切連絡は取り合えないのか?」
アルディも質問を投げかける。
「然り。何人たりとも越えられぬ壁のもと、互いの姿を見ることすら許されぬ」
「私達は王に会うという目的があるのだけれど、王には別個に交渉しろということかい?」
サフィラスの問いに、坊主は腕を組みながら尋ねる。
「そも、来訪者よ。この国の王は一人だと思っておるのか?」
「違うのかしら?」
「...そんな事も知らずに訪ねて来たのか」
五人の反応に、坊主は呆れた表情を見せた。そして、やれやれと説明を始める。
「クーロンには、“男の王”と“女の王”の二人がおられるのだ」
「なるほど。その二人がオウとトツをそれぞれ管理しているのかな?」
「然り。あとは実際に目で確かめてみるといい。案ずるな、馬車と馬は責任をもってこちらで管理しておこう」
すると、不安げな様子でリベラが声を掛けてきた。
「...サフィラス、どうするの?」
「従うしかないね。リベラはフレイアと一緒に行動して。大丈夫、何かあったら必ず助けに行くよ」
「...うん、わかった」
「ではリベラさん、行きましょう。サフィラスさま方も、くれぐれも気を付けて」
何度もこちらを振り向きながら、リベラはフレイアの後を追う。そして、二人が通ると門が閉まった。
「それにしても、ヴィオラはこっちなんだね」
てっきりあっちの方かと思ったと、サフィラスは不思議そうにヴィオラに話す。
「そりゃあそうよ、心はオトメでも身体はオトコですもの。リベラちゃんのことはすっごく心配だけど、ここで揉めたら後々面倒でしょ?だからこっちを選んだのよ」
「あの少女のことが気掛かりだが...。腕の立つ護衛がいるから大丈夫だろう」
アルディは眉をひそめてオウの門を見つめる。
「そうだね。...では、私達も行こう」
二人のことを気にかけながら、サフィラス達はトツの門をくぐった。




