─第5話 それぞれの想い─
「とりあえず、キミの名前を教えてくれないかな?」
「はい。フレイアと申します」
名乗る彼女は深々と頭を下げる。
「フレイア。先述のとおり、私はキミとは共にいられない」
「...納得がいきません。サフィラス様は、何か目的があって旅をしているのでしょう?それが達成されるまででもいい。傍に居させていただけませんか?」
遠ざけようとするサフィラスに、フレイアは彼の裾を掴む。
「戦闘面でも役に立ってみせます。諜報だって、なんでもします。ですから、どうか...!」
「サフィラス、どうするの?」
リベラはフレイアとは反対側の裾をきゅっと掴んだ。
「...そうだね。もう敵意は感じられない。それに、断っても尾行されそうだからね」
「では...!」
「うん。よろしく頼むよ」
「ありがとうございます!」
サフィラスの言葉に、フレイアの顔は綻んだ。
「万事解決、と言いたいところだが。指名手配犯に変わりはない。監視役として俺も同行しよう」
その様子を見ていたアルディは、ため息をついて声を発した。
「...私より弱いクセに」
「何だと!?」
「そういえば、フレイアは何故指名手配されているんだい?」
「分かりません。私はただ、子供たちが飢えを凌げるよう賞金首を捕らえていただけです」
「俺は子供を攫う誘拐犯だと聞いているが」
ほら、と懐から取り出した貼り紙を見せる。そこにはフレイアの似顔絵と罪状が書かれていた。それを一目見た彼女は声を荒げる。
「そのような事はしていない!」
「では仮に、貴様の言うことが事実だとしよう。その子供達はどこにいる?懐いているのであれば、その証明になるはずだが」
「...子供達はイルミスに身を寄せているから、今すぐには見せられない。けれど、信じて欲しい。私は誘拐犯ではない」
暫しの沈黙が辺りを支配する。フレイアの瞳を見据え、やがてアルディは頷いた。
「...分かった。貴様のことを信じよう。だが、不審な動きがあれば即剣を向ける」
「ああ。好きにするがいい」
「矛は収められたようでなにより。思わぬ事態と仲間が増えたわけだけれど、二人は私達の旅の目的は知らないだろう?城へ行く前に、軽く話しておこう」
冷静さを取り戻した二人に、サフィラスは経緯を話し始めた。
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「...という訳でね、私はルベールの王に追われている。その打開策を得るために、この国の王に謁見しようとしているんだ」
「なるほど。妙な姿だとは思ったが、そのような特殊能力があるのか」
髪、耳と上から下まで探るような視線を感じる。何度も味わってきたことだが、やはり慣れず目線を逸らす。
「そこで、最後にもう一度確認しておきたい。道中何があるかわからない。殺されるかもしれない。辛い場面に数多く遭遇するかもしれない。それでも、私達と共に来るかい?」
「はい。私は、最期までサフィラス様と共に」
「俺は騎士だからな、戦や汚い人間は腐るほど見てきた。自国には上手いこと話しておこう」
サフィラスの問いに、フレイアとアルディは変わらない意志を答えた。
「リベラとヴィオラは、二人が同行することに異論はないかい?」
「ええ。ないわ」
「...うん、私もないよ!この子も怖がってないから」
ポケットから顔を覗かせるハムスターは、すっかりくつろいだ様子で植物の種をかじっている。
「うん、ありがとう。───では、行こうか」
五人はそれぞれのわだかまりを抱えつつ、城へと向かった。




