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草案  作者: 禄星命
第2章
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─第4話 掟─

「...長々とごめんなさいね。聞いてて疲れちゃったでしょ?」

「平気さ。むしろ、話してくれて嬉しいよ」

「...ふむ、成長したな」

ヴィオラの様子に、アルディは感嘆する。

「そうかしら?」

「ああ。貴様は昔から、皆には一線を引いていたからな」

「ふふっ、そこは“女心と秋の空”よ!今日はそういう気分なの」

ウィンクをするヴィオラに、理解不能だとアルディは眉間にしわを寄せた。

「───盛り上がっているところすまない。来客のようだよ」

サフィラスは扉に目をやる。すると音も立てずに、陰から女が現れた。剣を携えており、敵意を持っているのが素人にも分かる。

「キャー!?な、何!?」

「敵襲か!?」

「おや?キミは以前宿屋で奇襲を仕掛けてきた...」

橙色の瞳に、特徴のある結った茜色の髪。その持ち主は、怒りを静かに滾らせていた。

「フン、あの時は世話になったな。だが、今の私は一筋縄ではいかぬぞ!」

「む、よく見れば彼奴は指名手配犯ではないか!放ってはおけん、俺も加勢する!」

アルディは背負っていた大剣を振り上げ、地面を蹴りあげ切りかかる。

「邪魔をするな!」

「ぬおっ!」

しかし女はそれを容易く剣で弾き飛ばす。そして、真っ直ぐにサフィラスを睨みつけた。

「キミの目的は何だい?あの時とは違って、仲間は居ないようだけれど」

「そんなの、決まっている。───雪辱を果たす為だ!!」

言い切るが早いか、一閃がサフィラスの鼻先をかすめる。

「わっ、とと。急に剣を振るったら危ないじゃないか」

「避けるな!剣を構えろ!私の相手をしろ!」

「そう言われても...」

「くそっ、私など相手にする価値もないと言うのか!ならば、これでも喰ら───、うわっ!?」

足元が疎かになっていた女は、部屋に散らばっていたぬいぐるみに躓く。サフィラスは咄嗟に手を伸ばして女を受け止めた。

「おっと、大丈夫かい?」

「...」

「怪我はなさそうだね。けど、これでもう懲りただろう?」

なだめるように、サフィラスは優しい声色で言う。

「───ったな」

「ん?」

「私の、純潔を奪ったな!」

しかしそれに反して、女は更に激昂した様子だった。予想外の答えに、彼は思わず絶句する。

「とぼけるな!今私の肌に触れているだろう!」

「ああ、ごめんね」

女の身体を支えていた手を離す。顔を合わせると、肩を震わせながら目に涙を浮かべていた。

「片方だけならまだしも、両方とも掟を破ってしまうとは...。なんという不覚...!」

「掟?」

サフィラスの問いに、女は拳を握りしめ暫し沈黙する。そして大きく深呼吸をすると、静かに語り始めた。

「...そうです。私の産まれた村には、ある掟があります。ひとつ、“男に打ち負かされてはいけない”。ふたつ、“男に触れられてはならない”。そして、万が一双方を破る男が現れたら」

その場にいた全員が固唾を呑む。

「...その者を生涯の伴侶としなさい」

大人達が動揺する中、リベラはきょとんとしていた。

「はんりょ、ってなに?」

「要するにお嫁さんだね」

「お嫁さん...」

サフィラスの説明に、リベラはただ言葉を反芻する。

「そういえば、昔何かの本で読んだわ。掟を護り続ける女性の戦闘民族がいるって。それが、アナタなのかしら?」

ヴィオラの問いに、女は目を伏せて頷く。

「我々には理解し難いが、彼女らにとって“掟破り”は神に背く行為に等しいそうだ。サフィラス、といったな。ここは責任を取るのが筋ではないだろうか」

眉間にしわを寄せながら、アルディは言う。

「うーん、私は確かに伴侶と呼べる存在はいない。けれど、彼女と私では生きる歳月があまりに違うからね」

「...?どういうことですか?」

「そうだね、とても長生きということさ。天珠を全うした仲間はいないけれど。だから───」

「それでも構いません!私が息絶えるまで、傍に居させて下さい!」

両の手をとり懇願する女に、サフィラスは困惑した表情を浮かべている。

「何だか大変な事になっちゃったわね...。あら?どうしたのリベラちゃん」

「...ううん、なんでもない!」

その様子を見てモヤモヤするこの気持ちは何なのだろう。幼い少女には、まだ分からなかった。

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