─第1話 普通とは─
「ん...」
「おはよう、リベラちゃん。具合はどうかしら?」
船内に戻って暫く経った後、ベッドに寝かされていたリベラが目を覚ました。
「あれ?ここは...」
「そう、船の中よ。アタシたち、あの後ちょっと色々あって戻ってきたの」
ヴィオラは水の入ったコップを、起き上がったリベラに手渡す。
「何があったの?」
「...それは」
「村人達に、犠牲者が出たことを咎められてね。簡潔に言うと、あの場には居られなくなったのさ」
言い淀むヴィオラの代わりに、青年が説明する。
「そんな...!サフィラスは何も悪くないのに!」
「いいんだ。あの村で術を使った際に、私の姿も見られてしまったからね。いずれにせよ、同じ結末だったよ」
「...サフィラスは、それでいいの?今までずっと、どこに行ってもひどいことを言われて。これからも、そうやって耐えるの?」
淡々と答える青年に、リベラは声を震わせる。
「そうさ。私が“普通ではない”限り、避けられないものだからね」
「...普通って、なんなんだろ」
「そうだね、定義は曖昧かもしれないけれど。平たく言うならば、ありふれた平凡なものかな。これといって特徴がなく───」
「違う、私が言いたいのは!どうして見た目が違うだけで、こんなに苦しまなきゃいけないの?なんで、悪いことしてないのにみんなに嫌われなきゃならないの?」
「...」
沈黙する青年に、リベラは泣きながら訴える。
「サフィラスは優しくて、良い人なのに!なのに...!こんなの、あんまりだよ!」
「リベラ」
青年は中腰になり、リベラと目線を合わせる。
「私のために怒ってくれているんだね。...けれど、負の感情に支配されてはいけないよ。大丈夫、安心して。どのくらい時間がかかるかは分からないけれど、いつかきっと、私の存在を認めてくれる人は現れるさ」
「...本当に?」
「うん。あの村の店主だって、私の容姿に嫌悪することなく接してくれた。それに今は、リベラとヴィオラがいる。今まで孤独だった私にとって、充分過ぎるくらいの幸運さ」
「サフィラス...」
青年は懐からハンカチを取り出し、リベラの目元にそっとあてがう。
「さあ、涙を拭いて。気持ちを切り替えて、エレウスに向かおう」
「そうよ、リベラちゃん!気分転換に、エレウスに着いたら美味しいパンケーキでも食べに行きましょ!」
「───うん!」
『...ホント、“普通”ってなんなのかしらね』
いつもの明るさを取り戻したリベラに喜びながらも、ヴィオラは複雑な心境になった。




