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隣のイケメン君  作者:
9/13

かわいい彼女と彼

そんなこんなでお昼を食べることになったのだが。



「なあ、柊、なんでこいつがいるわけ」

「いや…今日食べようって約束したから」



朝梅田と約束をしたのは事実だ。

友達なんだからお昼も一緒に、という彼に半ば押し切られる形で一緒にご飯を食べることになったのだ。

俺は一緒に食べようが食べまいが一向に構わないのだが、失念していた。隼人が梅田のことを好いてない、むしろ嫌っているということを。


どういう経緯があって隼人が梅田のことを好きでないかは俺が知る由もないのだが、事実、今の雰囲気はあまり好ましいものでもなかった。


「え、今日だけじゃなくて俺は竹本とこれからもお昼一緒に食べたいなと思うんだけど」

「は?」

「う、梅田…」


頼むから火に油を注がないでくれ!

梅田はそんな俺の気を知ってか知らずか、隼人の方を見もせずに俺を見つめながらそんなことを言ってのける。

心なしかさっきよりも隼人の表情が怖いんですけど。てか今の地を這うような低い声はほんとに隼人か?

それに可愛い顔が眉間に皺まで寄って台無しなくらい怖いんですけど。



「うっざ。まじでうざい。俺が柊と一緒に二人で食べるんだよ」

「そんなの知るかよ。俺が竹本と二人で食べたいから食べるんだよ」



ちょ、待って。俺そっちのけで会話進めないでくださいお願いだから!

てか「二人」じゃなくて「三人」で食べるという選択肢はないんかい!

二人ともそこを強調して話すので、その気は更々ないらしいことが伺い知れた。



梅田も梅田だ。そんなに隼人を挑発しないでいただきたい。

何に対して張り合っているのか、梅田は俺が見たこともないような真剣な眼差しで隼人の方を見ている。



「あーもう!二人とも仲良くできないのかよ!」

「「無理」」




仲がいいのか悪いのか、二人してハモった返事に、俺は再びため息をつくのであった。

そして俺はなんとも空気の悪い昼食タイムを無心で乗り切ったのだった。








一度あることは二度ある。

それがまさに今なのではないだろうか。



「いつも柊と帰ってるのは俺なんだけど」

「でも俺は竹本と友達になったんだから、帰る権利はある。別に竹本は清水のモンじゃないだろ」

「柊は俺のものに決まってるから」

「いやいやいや、俺はモノじゃないから」

「柊!そんなの分かってるよ!世界で一番柊はかわいくて俺の大事な人だよ?」

「はぁ?なんで清水がそんなの決めてんだよ」

「だって柊にとっても俺が大事だからだよ」

「はぁ?お前のジャイアン理論は聞いてないから」

「…」



もはや突っ込みすらする気力も失せた。

お昼の時は途中から無になったらなんとかやり過ごせたのだが。

今もその昼休憩の光景がデジャブしているのだ。


二人は仲がいいのか悪いのか、よくわからないことを言い争っているのだ。


「そんなことどうでもいいから、帰ろうぜ」

「「どうでもよくない!!」」



ほら、今だって息ぴったりじゃん。言ってやろうかなと思ったけれど、顔を見合わせて思いっきりしかめっ面をした二人はそっぽを向いた。

それにしても、美形はしかめっ面をしたとしても美形は変わらないのだから得だなと思う。

俺だったら平凡な顔がさらに悪化してしまうだろうから。



「俺、早く帰りたいんだけど」

「ごめんな、柊。一緒に早く帰ろ?」

「竹本、お、おれと帰ろう!」


梅田は俺に向き直るやいなや、さっきまでの勢いはどこへいったのだろうか、どもりながら俺に話しかけてきた。梅田はだいたいこういう奴なのだと思ったら気にはならないけど、隼人は更に嫌な顔をしていた。


けれど今日分かったことだ。梅田は案外親しみやすいし、面白い。何よりイイ奴だ。イケメンだし。



「ああ、いいよ」

「!さ、さんきゅ!」



笑顔で了承すると、梅田は顔を少し赤くしてはにかんだ。その梅田の笑顔を見て、クラスの女子たちは色めきだすのだ。ちくしょう、イケメンめ。


「柊が許したからって、俺は許してないから」

「隼人…お前なぁ」


口を尖らせる隼人はそんなことを言っているが、結局は俺の望み通りにしてくれることを俺は知っている。

今までだってそうだったのだ、こいつは俺の一番の親友なんだから。

するとクラスの委員長が隼人に声をかけてきた。



「清水~、お前提出物出してないだろ。至急先生が出せってさ」

「はぁ?!あれ今日だったっけ!?…くそぉ、ついてない…」

「隼人、ドンマイ…」


どうやら今日提出の数学の課題を出しそびれたらしい。隼人らしくもないなぁ、いつも早めに出してるのに。

隼人は「しょうがないから二人で帰れば。今日だけな」と言い残して、ため息をつきながら職員室へ駆けていった。





そしてそんなことを話していると、クラスメイトの中橋さんが梅田に話しかけてきた。

中橋さんはクラスでも一際華やかで、正直めっちゃ可愛い。平凡な俺は、当たり前だが話したことはほとんどない。

今日も長い髪をくるくるに巻いた彼女は、梅田にすり寄ると耳元で囁いてた。

ちょ、待て!なんだその距離は!明らか胸が当たってるだろ!

中橋さんは俺たちの視線など歯牙にもかけない様子で、むしろもっとひっついて腕をからませると、梅田を上目遣いで見つめていた。



「ね、真、竹本くんとどんなお話してたの?わたしも混ぜてほしいなぁ〜よかったら、一緒に帰らない?」

「はあ?中橋、お前どういうつもりで…」


こ、これは…もしや嫉妬?嫉妬なんですか。

こんな平凡とつるんでないで私とお話して?っていうことなのか、んん?

そんな中橋さんに対し、梅田は迷惑そうな目で追い払おうとする。

これは、もしかしなくても…きっと、そうだ。

う、梅田めえええ!!!

お前中橋さんと付き合ってたのかよ!

超可愛い中橋さんと付き合えるとはなんとうらやましい…じゃないだろ俺。僻むな、俺。

相手は学年でも1、2を争うイケメンな梅田だ。しかも梅田は顔良し、性格良し、頭良し、な三拍子がそろっている。

そんな奴を女子がほっておくはずがないのだ。


ここは俺も大人な対応をするべきだ。

彼女さんがいるなら、そちらを優先した方がいいのだろう。決して悲しいとかそういうことはない。



「梅田、彼女を優先した方がいいんじゃないか?俺は別にいいし」

「え、なんで?竹本?」

「え、むしろ付き合ってる彼女となんで帰らないんだ?」

「付き合ってない!」

「…そ、そうなのか?」

「そうそう!勘違いされたら困る!」

「…はぁ…」



俺は正論を言ったまでだと思ったのだが。

どうやら付き合ってはいないらしい。

あまりの剣幕に俺が若干引いていると、梅田は気まずそうに「ごめん」とつぶやいた。

いやいや、謝るのは俺の方ではないのでは…

隣にいる中橋さんの顔が梅田を凝視して固まっていたのだ。

それはきっと、これだけのクラスメイトに注目される中で、言ってみれば梅田に眼中にない、と宣言されたことになる。

つまりは彼女のプライドはズタズタにされたことと等しいのだ。今や彼女の羞恥心は振り切れているのだろう。俯いて震える彼女は、あまり親しくはないけれど可哀想にさえ思えてしまった。

仮にも女の子をこんな状態にして、特に被害は被っていない俺に先に謝る梅田がよくわからなかった。


「梅田、俺に謝るんじゃなくて…中橋さんに謝れば?」




あ、やべ。

今の言い方結構冷たかったかな。

言ってしまった後で、少し考えたけれど、やっぱり言っとく事は言っとかなきゃなぁ、と思い、俺は梅田に向き直った。

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